三菱重工、「次の稼ぎ頭」づくりへ生みの苦しみ 頼みの綱「スペースジェット」は納入延期6回

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――地球温暖化問題の観点から、二酸化炭素を排出する石炭火力発電に融資がつかなくなるなど、火力発電には逆風が吹いています。

二酸化炭素の問題は地球温暖化の観点から喫緊の課題であるのは間違いない。一方でエネルギーは人々の生活に不可欠であることは論を待たない。

私たち三菱重工にはいろいろな解決策がある。まずは既存の発電所の二酸化炭素排出量をいかに抑えるか。既存の発電所をいきなりすべてやめてしまうわけにはいかない。

泉澤清次(いずみさわ・せいじ)/1981年東京大学教養学部卒業、三菱重工業入社。国際宇宙ステーション実験棟「きぼう」の開発に携わる。2013年三菱自動車常務、2016年三菱重工執行役員を経て、2017年6月取締役。2019年4月から現職。(撮影:今井康一)

再生可能エネルギーという意味では洋上風力発電もやっているし、排出された二酸化炭素を捕まえる「カーボンキャプチャー」の大きな実証プラントも手掛けている。二酸化炭素を排出しない火力発電として、今後の解決策のひとつとも言われる水素発電でも、すでに(LNGに水素を混ぜて燃やす)30%混焼や、その先の水素だけを燃やす専焼のガスタービンも視野に開発を進めている。

議論の分かれる分野ではあるが、原子力の活用も一つの選択肢だと思う。安全安心は必要不可欠なので、どうあるべきか電力会社と一緒に検討している。エネルギーや環境に関しては、地域や国にあった解決策を提案していくのが私たちの役割だと思っている。

AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といった先端技術をいかに組み込むかも重要だ。ものづくりにこだわって一生懸命やっていればいいということはなくて、ものづくりを基盤としていろいろなサービスや価値を提供するということが三菱重工の存在意義だと思っている。

高級船や特殊船で強みを生かしていく

――祖業の造船については、長崎造船所香焼工場(長崎市)の売却も視野に検討しています。

香焼工場が完成した1972年は、100万トンクラスの大きな外航用タンカーが隆盛を誇った時代。それで大きなドッグ(船を建造・進水させる施設)を作った。

ただ、今の造船業界は中国や韓国が非常に大きくなってきている。両国は政府からの支援もあって競争力が高いのも事実だ。そうした中でどう対抗していくかだが、やはり大きくてたくさんのモノを運ぶような船は日本の中で作ってもなかなか競争力を維持できない。

われわれの強みを生かせるのはもう少し高級な船や、海上保安庁向けの特殊船といった船だ。やはり国の発展段階によって必要とされる産業は変わるので、これは進化の歴史ではないか。

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