三菱重工、「次の稼ぎ頭」づくりへ生みの苦しみ 頼みの綱「スペースジェット」は納入延期6回

拡大
縮小

――かつては造船がけん引し、今は発電が稼ぎ頭になっています。時代とともにメインとなる事業が変わるのであれば、今後の三菱重工の事業ポートフォリオはどうなっていくのでしょうか。

長い歴史の中で、三菱重工のポートフォリオは随分変わってきた。昔はドライクリーニングの機械でトップシェアだった。射出成形機や印刷機械など、そのときそのとき必要とされる製品を作ってきた。

その中で三菱重工が日本でやっても事業として成り立たないものは、よその国や企業に売却してきた。その結果、残ったのは「パワー」「インダストリー&社会基盤」「航空・防衛・宇宙」の3事業領域だ。

三菱重工の泉澤社長は「エネルギーや社会の基盤、モビリティに関する事業をやっていくことに変わりはない」と話す(撮影:今井康一)

三菱重工は日本のGDPの伸びと軌を一にして、かつては国内市場メインで事業を展開してきた。だが、バブル崩壊後に日本の成長が鈍化していくとともに、グローバルなマーケットを目指した。事業構造や経営のやり方を変えていき、「選択と集中」で伸びる事業に対してリソースを投入したのがこの10年くらいだった。

20年~30年後を考えると、入れ替わったり、縮小・拡大していく事業もあるだろう。そのときの稼ぎ頭が何かと言われると、「これだ」と示せるものはまだない。だが、エネルギーや社会の基盤、モビリティに関する事業をやっていくということに変わりはない。

スリーダイヤへの信用を大事にしていく

――三菱グループは2020年に150周年を迎えます。グループの強みは何でしょう。

「スリーダイヤ」に対する信用はある。ただ、海外から見ると、投資家以外の方からは三菱重工も三菱商事も三菱電機も同じように映るようだ。その意味ではたたかれるようなことをされると困るし、自分たちもしないようにしなくてはいけない。

個人的な意見だが、(三菱グループ同士で)仲間意識のようなものもある。私は剣道をやっているが、入社したときから三菱グループの剣道部の人とは知り合いで、三菱重工の先輩よりも他社の剣道部の先輩にお世話になっている。

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――グループ内では、たとえば三菱電機のルームエアコンと競合したりします。

われわれが狙っているのは空調としての事業領域で、大型のターボ冷凍機やビルなどのコミュニティ全体の空調も含まれる。小さな白モノ家電としてのエアコンではない。そこを三菱電機と一緒に、と言われるかもしれないが、今のところそういうつもりはない。

――今後のグループの結束は変わっていくのでしょうか。

戦後間もなく財閥解体があった混乱期は、三菱グループ挙げて国を復興させて国力を上げていかなくてはいけなかった。今は、グループと言っても各社が自分たちの判断で経営をしている。

われわれも三菱商事と組むこともあるし、住友商事や丸紅と組むこともある。三菱商事だから組んで、三井物産だからやらないということはない。

高橋 玲央 東洋経済 記者

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たかはし れお / Reo Takahashi

名古屋市出身、新聞社勤務を経て2018年10月に東洋経済新報社入社。証券など金融業界を担当。半導体、電子部品、重工業などにも興味。

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