部下に「目標を問う」のが今どき流行らない背景 上司が無意識にやりがちな「WILLハラ」とは

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例えば、「こんなささいなことは夢とは言えないだろう」と、無意識にふたをしているケースがある。先に紹介したとおり、実現したいことは仕事に直結する必要はないし、個人的な夢でも構わない。本人の成長の原動力にしてほしいからこそ、上辺のきれいごとよりも本音の意見を引き出すことが大切だ。

もしくは、上司との関係性や職場の雰囲気のせいで、本音が言えないのかもしれない。3年後はどうなりたい?という問いに、空気を呼んで「〇〇さん(上司の名前)のようなマネジャーになることです」といったまったく本音と違うWILLを掲げているケースもある。

かなえたい夢は人それぞれなのだから、偉業を成し遂げることだけを求めるべきではない。一人ひとりの気持ちを受け止め、尊重する土台を日々のコミュニケーションの中で育む必要があるだろう。

また、今任せたい業務を、個人それぞれの実現したいことにどう接続させ、納得感やモチベーションにつなげていくかも上司の腕の見せ所になる。そのためにも、まずは相手を知ること。もはや全員一律のマネジメントで人が育つ時代ではない。

効果的にマネジメントを実現するには

ちなみに、WILL・ありたい姿を問うている上司に対して、部下は「そもそも、あなたはどうなんだ?(将来どうありたいなんて、上司のあなたにはあるのか?)」と思っているケースも多い。思い当たる節がある方も多いのではないだろうか。

このように、形式論のWill-Can-Mustを取り入れるのではなく、経営や人事がしっかりと全体感を持ったうえで、こうしたマネジメントのあり方を、事業にあえて実際に運用できる段階まで引き上げないと、現場の負荷は増えるばかりだ。

仕事の成果や能力で評価するだけでなく、バックグラウンドやどんな価値観を持っているかなど、人となりまで知ることではじめて効果的なマネジメントは実現できるし、そのためのバックアップ・運用支援も必要不可欠だ。

弊社の支援するクライアント企業の中には、Will-Can-Mustマネジメント力の強化に、上長に1人当たり延べ2年ほどをかけるケースや、評価やフィードバックも合わせて変えるケースもある。もしくは、前提として、上司自身側に改めて、本人のキャリアを考えるきっかけを提供するケースも非常に増えている。

みなさんの会社では、ありたい姿やWILLに関して、どんな会話が行われているだろうか? 人にはもっと大きな可能性があるし、それをどう引き出すかが問われる時代。過度なプレッシャーになるでもなく、実は冷めきった目でみられているということでもなく、ぜひ皆さんの組織や上長コミュニケーションのあり方を、考えるきっかけにしていただければ幸いだ。

徳谷 智史 エッグフォワード 代表取締役

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とくや さとし / Satoshi Tokuya

京都大学経済学部卒業。企業変革請負人。組織・人財開発のプロフェッショナル。大手戦略系コンサル入社後、アジアオフィス代表を経て、「世界唯一の人財開発企業」を目指し、エッグフォワードを設立。総合商社、メガバンク、戦略コンサル、リクルートグループなど、業界トップ企業数百社に人財・組織開発やマネジメント強化のコンサルティング・研修など幅広く手がける。近年は、先進各社の働き方改革、AI等を活用したHR-Tech分野の取り組みや、高校・大学などの教育機関支援にも携わる。趣味はハンドボール、世界放浪等。ご相談・取材・執筆・講演依頼はこちら

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