部下に「目標を問う」のが今どき流行らない背景 上司が無意識にやりがちな「WILLハラ」とは

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では、明確な目標が見つかっていない社員に対しては、どんな育成方針を取ればよいのだろうか。まず前提として理解しておきたいのは、キャリア形成に大別すれば、「山登り型」「川下り型」の2つの型があることだ。

この2つのキャリア形成の方法は、就職支援を手がけるキャリアコンサルタントには広く知られる概念。山登り型は、山頂に到達するという大きな目標のために、いつ・どんな道を通過するかと計画を立て、上っていくようなキャリア形成を指す。

一方の川下り型は、川の流れに従って進みながらも、目の前に現れるさまざまな障害をクリアしたり、分岐点で最善の選択をしたりすることで力をつけ、やがて大海にたどり着くようなキャリア形成をイメージしてもらえるとわかりやすい。

つまり、確固たる夢を持つ人向けの「山登り型」、そうでない人向けの「川下り型」ともいえる。重要なのは、2つの型に優劣はないこと。転じて、「実現したい目標がある人が偉い」「夢がない社員は能力が低い」とは言えないことを前提に、部下とコミュニケーションを取らなければならない。

川下り型とはいったい何か

しかし、組織運営の常識からすると、「川下り型」はあまりピンとこないのではないだろうか。会社というものは何事も初めに計画を立て、それを達成することの繰り返しで成り立っている。

ビジョンを描き、目標を掲げ、その実現のためにマイルストーンを置き……といったプロセスに慣れている人からすると、山登り型はイメージできても、川下り型はなんだか行き当たりばったりのように映り、このやり方が正しいのかと戸惑うかもしれない。

そこで、川下り型人材を育成・マネジメントする際は、「今の強み(できること/得意なこと)」「今の仕事(やらなければならないこと)」に注目するのがおすすめだ。言い換えるならば、本人の目の前にあることを起点にして、できることを増やし、強みを伸ばしていくような育成方針。CAN(できること)が増えて初めてWILLが見えるケースも多い。やってみないことには実現したい世界も見えにくいのだ。

山登り型のように遠い未来はわからなくても、今とその延長線にある身近な未来のことなら想像しやすい。ポイントは、弱点の克服よりも強みを磨く方向に導き、ポジティブな成長を志向すること。頑張れば手が届くような小さな目標を積み上げていくことで、大きな成果に結びつけるようなアプローチが効果的だ。

大きな目標を立てづらい人が増えたのは、時代の違いもあるだろう。10年、20年前よりもさらに変化のスピードが上がり、未来を予測しづらくなったからこそ、「先のことなんて誰にもわからない」「はじめから決めすぎるより、柔軟に変化すべき」といった価値観が増えている。そうした時代において、一方的に人生の目標を持とうと押し付けるのは、いささか強引なのだ。

ただ、彼らに本当に「WILL」や「ありたい姿」がないかといえば、必ずしもそうとは限らない。気づいていない、もしくは言語化できていないだけで、上司が部下への関わり方を変えて、自覚を促せることも数多い。

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