憧れの職業「YouTuber」、戦国時代はこう稼ぐ 10代から大人向けにじわりシフトする実態
「ねおを編集長とした、小さな編集部という体制を築いている。具体的にはSNSやYouTube投稿の戦略や、企画の相談、データ分析をサポートしている。ネットからテレビまで、複数メディアを横断した年間計画で進めている」(森社長)。
YouTubeの広告収入に頼らず、他に稼げるポイントを一緒に開拓しているという。「個人プロデュースでは難しい領域を、チームで進めることで勝ちにいく。ねおの成功事例が未来のプロダクションのあり方になるのでは」と森社長は語る。
実際にYouTuber専業で生きていくのは至難の業だ。ボーダーラインは「チャンネル登録数10万人」と言われるが、平均再生単価0.1~0.3円で月間25本の動画をアップすると、月収は25万~75万円程度。そこから撮影や編集にかかる必要経費を差し引くと生活はギリギリなのだ。
もっとも、登録者数が10万人以下でも、黒字で運営しているチャンネルもある。Zeppyは投資家に特化したYouTuberプロダクションとして、2019年6月に設立し、投資チャンネルを運営している。チャンネル登録者数は7万人弱、動画の再生回数も1万~18万回と波が大きい。しかし井村俊哉CEOは「会社として単月黒字化している」と説明する。
株式=投資家向けなら、単価も上がりやすい
「Zeppyの場合、視聴者は30~40代が多く、再生単価は0.6~0.8円。企業からのタイアップでIR(投資家向け広報)の動画制作も行っている」(井村CEO)。株式投資という分野では視聴回数の大幅な伸びこそ期待できないが、購買力のある視聴者層が見込めるので再生単価が上がりやすい。企業にとって個人投資家に対するPRの場となれば、タイアップの広告費も出しやすい。
今年1月にはテレビ東京から追加出資を受けたほか、投資家YouTuberのもふもふ不動産を引き受け先として第三者割当増資を実施した。もふもふ不動産は登録者数15万人を超える人気チャンネルで、再生単価は2円に達したことがあるほどだ。「いずれはファンドを作って、個人投資家に向けた投資商品を売っていきたい」(井村CEO)。良質な視聴者を囲い込むことで、再生回数に頼らない新たなビジネスを見据えている。
実は今、YouTubeで進んでいるのが、こうした大人向けコンテンツの充実化だ。25歳以上を対象にした動画ではターゲティング広告の単価が上がりやすい。対照的に18歳以下はターゲティングできないようグーグルは決めており、若者を対象とした動画は再生単価が上がりづらくなっている。
これまでYouTubeは、ヒカキンやはじめしゃちょー、フィッシャーズの人気が象徴するように、10代の若者に支持されるチャンネルが存在感を放ってきた。その構図は今も変わらないものの、芸能人を筆頭とするYouTuberの参入が増えたことで視聴者が分散し、再生回数や再生単価を従来通りに稼ぐことが難しくなってきている。
視聴者の「変調」を最も敏感に察知するのは、ほかならぬYouTuber本人だ。ピークアウトに伴う収入減に備えて独立の道を選ぶのか、YouTube以外の稼ぎ口を求めて企業とのタイアップを増やすのか、それとも別メディアへ活躍の場を広げるのか――。その選択肢は全方位へと広がりつつある。YouTube関連ビジネスの市場拡大は、まさにこれからなのだ。
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