アメリカ・宇宙ビジネス最前線、華々しさの陰で資金集めに難航も
ワシントンD.Cのスミソニアン国立航空宇宙博物館。数あるスミソニアン博物館の中でも、年間600万人が訪れる航空宇宙博物館は、スミソニアンの中でもいちばん人気があるといわれる。その1階には、前面に穴が開いたフットボールのような楕円形で、白い母体に色あせた赤と紺色の宇宙船スペースシップワンが展示されている(上写真)。
スペースシップワンは、1986年に無着陸で世界一周を達成した航空機「ボイジャー」を設計したバート・ルータンが、マイクロソフト共同経営者ポール・アレンから資金援助を受けて開発した宇宙船。政府の援助をまったく受けず、民間の力だけで開発したものだ。スペースシップワンは宇宙空間への入り口、高度100キロメートルに到達。それ以降、スペースシップワンの開発企業、スケールド・コンポジッツ社(以下、スケールド社)は、宇宙開発事業で成功の道をまっしぐらに突き進んでいる。
スペースシップワンは2005年、「人を乗せて高度100キロメートル以上の宇宙空間に到達し、2週間以内に2度、宇宙飛行に成功」という条件をクリアし、エックスプライズ財団の民間宇宙開発賞金、約10億円を受賞した。
スペースシップワンは最初に、ホワイトナイトという運搬用航空機につり下げられた形で1万4600メートル上空に運ばれる。そこでホワイトナイトから切り離れ、スペースシップワンはロケットエンジンで急角度で上昇し、マッハ3まで加速。大気圏から宇宙空間に達し、真っ暗闇の空間や無重力を楽しんだ後、大気圏に再突入。「尾翼を65度に立てることで摩擦熱の発生を防ぐ」特殊な設計で、宇宙船が帰還する際の安全度を高めている。
スペースシップワンの優れたロケットを聞きつけ、ヴァージン・グループ会長、リチャード・ブランソン率いるヴァージン・ギャラクティック社が、スケールド社に接近。年間500人を約2000万円で宇宙に送る事業計画を持つヴァージン・ギャラクティックは、スケールド社から技術供与を受けている。
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