大混乱を回避、台湾の知られざる「マスク事情」

政府が買い上げ、「マスクマップ」で在庫確認

台湾初のデジタル大臣となった唐鳳氏や衛生福利部(厚生労働省に相当)は、マスクを販売する薬局や在庫などのデータをホームページ上で公開。民間が開発したさまざまなマスクマップやアプリの構築・提供を始めた。

2月6日に実名購入制を始めたとき、衛生福利部のホームページにリンク集が作成、公開されている。唐鳳氏も、自身のSNSで利用を呼びかけた。

台湾で利用されているマスクマップの1つ

マスクマップを実際に起動すると、購入者の端末の位置情報から近隣の特約薬局が表示され、在庫量も一目でわかるよう色分けされている。在庫量を見える化したことで、完全ではないものの、購入できないことへの不満は一定程度解消されているようだ。

ここで注目したいのは、マスクマップを構築するまでの唐鳳氏や台湾政府の考え方と取り組みだ。唐鳳氏は週刊東洋経済のインタビューで、「デジタル技術はもっと人間に寄り添い、多くの人間が技術の恩恵を受けられるようにすべきで、逆に言えば人間社会がデジタル技術に合わせる必要はない」と述べた。

つまり、マスクマップを始めたときから、これで社会全体が安心・安全を取り戻すものとして臨んだのではなく、あくまでも購入者の利便性を少しだけ高めようと考えて構築されたものだというのだ。

国がマスクを管理し、混乱を回避

各薬局の在庫情報をどこまで迅速に公開できるかが問題だ。今回、台湾でこれがスピーディに行われた背景には、国がマスクを管理下に置いたことでメーカーや薬局との根回し調整が不要になり、国家主導で情報公開が行われたためと考えられる。

非常事態とはいえ、マスクを買い上げられたメーカーに在庫情報の提供を求めれば、調整に時間がかかってしまうことは想像に難くない。

このような非常時に人々がフェイクニュースやデマに惑わされないようにするには、国が率先して正確な情報を発信する必要があることは言うまでもない。台湾は政治的に中国からの有形無形の圧力をつねに受け、社会・文化的に日本より信心深い人が多い。そのぶん、ウイルスという目に見えないものへの恐怖感は、おそらく日本人が感じているものよりも大きいかもしれない。

正確な情報をいかに迅速に発信して国民に届けるか。これこそ、唐鳳氏に課せられた仕事であり、マスクマップの製作によって任務を果たしたと言えるだろう。

国と民間が一体となって防疫体制の構築に取り組んだ、台湾のマスクマップの事例は今の日本にとっても参考になる。

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