コロナ感染拡大防止の備えが不十分と言える訳 今は下火だがインフルの脅威も看過できない

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この説明は苦しいと思う。韓国にできて、日本にできない理由は考えにくい。さらに、アメリカは国内で流行が始まる前の2月25日に、米疾病対策予防センター(CDC)が開発した遺伝子診断キットを、全米の検査所で使用できるようにするため「緊急使用認可」としたと発表している。

尾身氏は元医系技官。さまざまな事情を抱えておられるのだろう。この点は外部サイトとなるが、Japan In-Deptの『遺伝子検査行う体制作り急げ』(2020年2月25日配信)で詳しく解説した。

無症状や軽症の人が病院に殺到すると重症患者の対応が遅れるという事情もあるかもしれないが、感染症の治療の基本が「早期診断、早期治療」であることは医学界の常識だ。

新型コロナウイルス感染は遺伝子検査をしなければ診断できない。診断しなければ、有望な抗ウイルス剤も投与できない。

中国疾病対策センター(CDC)の報告によれば、全体の致死率は2.3%で、10代から40代が0.2%から0.4%なのに対し、80代以上では14.8%と跳ね上がる。

高齢者のリスクは大きい

若年者は感染しても自然治癒する人が大半ということになるが、高齢者はかなりの方に命を落とすリスクがある。クルーズ船の乗客も既に4名が亡くなっている。彼らを救うには、早期診断・早期治療が必要だ。厚労省のやり方はいただけない。

もう1つ問題なのは、彼らがインフルエンザの存在を忘れていることだ。インフルエンザと新型コロナウイルス感染は臨床像からは区別できない。

日本では毎年1万人程度がインフルエンザで命を落とす。ただ、早期に診断すれば、タミフルやゾフルーザなどのインフルエンザ治療薬を投与できる。発熱の持続を1日程度短くするだけだが、体力の低下した高齢者には、その1日が大きい。今回の厚労省の指針は、インフルエンザの死者を増やす可能性がある。

幸い、今年インフルエンザは流行していない。昨年末までは流行していたが、今年に入り、一気に下火となった。暖冬は昨年から続いており、それだけでは説明できない。

私は新型コロナウイルスとの関連の可能性も考慮したほうが良いと考えている。昨年12月中旬の段階で、武漢では新型コロナウイルスがヒト-ヒト感染していることが判明しており、日本にも流入していたはずだ。

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