新たな私的整理手続き ADR活用急増のワケ

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求めている金融支援の内容も、財務危機の深刻度によって差が開く。債務返済スケジュールを変更するだけの計画から、債務免除(債権放棄)やデット・エクイティ・スワップなど、本格的な財務リストラを伴う企業もある。コスモスイニシアやルートインジャパングループのように、メインバンクの存在感が低い企業も散見された。

中でも関係者の注目を集めたのが、非上場企業であるルートインジャパンのケースだった。全国各地の地場金融機関から資金を借り入れ、ホテルを建築するというビジネスモデルの性格上、金融債権者の数は95社と他の事例と比較しても飛び抜けて多い。1行でも不同意があると、法的整理へ移行することもありえたため、「全債権者の同意」という要件をクリアできるかが焦点だった。

結果は手続き成立。関係者によると、既存債務の弁済期間を10年に延長し、時間を稼いで「再生」を図る計画を立てた。ルートイン本体での債権放棄はなかったが、関連SPC(特定目的会社)の処分に伴い、融資していた金融機関には損失が発生したもようだ。

一方、金融市場では「公募社債がADR手続き上の金融債権に含まれるか」という点も問題になっていた。

マンション分譲の日本エスコンのケースでは、ADRの手続き上で社債を含めなかった。同時並行で社債権者集会を開き、社債の返済スケジュール延長と希望に応じて買い入れを行うことを決定。公募社債を発行するウィルコムやアイフルでも、社債を手続きに含めない意向だ。

「転々と流通する社債の性格から社債権者を特定するのがテクニカルに難しいうえ、社債をADR手続きに取り込むと再生後に社債の発行が困難になることが懸念される」と、みずほ証券の野村朗クレジットアナリストは指摘する。

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