若者が得たセックスの自由は大事にしていい 湯浅誠×瀬戸内寂聴 リベラル対談(後編)

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湯浅:女性に関していうと、セックスだけじゃなくて、女性の参政権も70年前にさかのぼればなかったわけですし、働くことにもかなり抵抗があったと思います。そういう意味では、寂聴さんが生きてこられた90年というスパンで考えると、社会がずいぶんよくなった面もあると思うのですが。

瀬戸内:よくなった面もあります。ただ、これからよくなっていくことは、あまりイメージできないです。悪くなっていると思う。それでも、やっぱり若者には期待しています。しょうがないバカもいっぱいいますけど、まだ若者は純粋なところがありますからね。ある日、誰かの本を読んで突然、目覚めて、これじゃいけないと思う人が何人か出てくるかもしれない。その子がしっかりしていれば、世の中を変えることができます。われわれ年寄りが何を言ってもダメなの。

湯浅:そんなことないですよ。みんながそう思っていたら、寂聴さんの本や言葉を、こんなにたくさんの人が読まないですから。

瀬戸内:私の本はそれほど売れていないです。まあまあっていうぐらい。つまらない本はどんどん売れていますけどね(笑)。

自分の枠を飛び越えれば、変われる

──今の若者は自分のことしか考えていない、と瀬戸内さんは何度もおっしゃっていますが、そういう若者の姿勢を変えるには、やはり本や人との出会いがきっかけになるのでしょうか。

瀬戸内:人間の考えることや知恵には、限度があります。だって自分の親を選んで生まれてきましたか。そうじゃないですよね。向かいのお父さんのほうがずっと背が高いし、隣のお母さんのほうがずっと優しいとかあるでしょう。人間は生まれさせられているのです。人間の知恵以外の何かがある。それが神であり仏であり、それを信じるか信じないかは、その人の選択によりますね。

私は神も仏も、全然、信じていなかった。うちは仏壇屋だったから、なおのこと信じていなかったの。だけど、やっぱり努力して小説を書いていても限度があってね、これは自分を変えなきゃいけない、というときが来たのです。それからいろいろ考えてカトリックの洗礼を受けかけたけれども、ちょっと待てよと思い直して、結局、仏教を選んだ。仏教は深遠ですから、とても全部を理解することはできないし、たぶんこのまま死ぬと思うけど、仏教を選んだことは後悔していません。

湯浅:出家されたのは51歳のときでしたか。

瀬戸内:そう。

湯浅:私は枠を飛び越えたりするのが、大事じゃないかなと思っています。仕事もきつくなってきているし、給料もそんなに上がらないという状況で、どうしても守りに入らざるをえない。将来のことも不安、子どもの教育費もかかる、家のローンもある、そういう不安を挙げ始めるときりがない。一方で、社会的に大きな事件や災害が起こったら、自分も何かできないかと考えたり、あるいは会社の中だけの付き合いではない関係を持とうと思ったり。飛び越えたいとか枠を広げたい、世界を広げたいという欲求を、みんなが持っていると思うのです。

そうして自分の世界が広がれば、社会的なものが自然に視野に入ってきます。だから若者に「社会的なことを考えろ」と言うよりは、自分の枠を飛び越えてみる、それこそ寂聴さんが51歳でされたように、あえて全然、別の世界に飛び込んでみると、結果的に変わるのではないでしょうか。

瀬戸内:人間はいくつにもなっても変わることができます。行き詰ったときは思い切って飛び越えることね。それが革命です。

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