「金価格はこれから一段と上昇する」と読む理由 すでに日本円は「安全資産」ではなくなった
ただ米国債は円のように安全資産としての価値が薄れたわけではなく、足元の価格はしっかりと上昇している。米国債に買いが集まると金利は低下するので、10年債の利回りは21日時点で1.47%と、昨年9月初め以来の低水準をつけるに至っている。
もっとも、この先インフレがさらに進むような事態となれば、米国債に積極的な買いが集まって来なくなる可能性は十分に高い。また、トランプ政権が選挙対策もあって、新たな所得税減税を検討していることにも注意が必要だ。財政赤字がさらに拡大するとの見方が強まれば、米国債にとっては大きな売り圧力となるだろう。
最高値更新の可能性もあるが、注意も必要
円が安全資産としての価値を失い、米国債も積極的に買いにくいという状況下で、この先COVID-19の完成拡大や世界的な景気減速に対する懸念から市場心理がさらに悪化することになればどうなるか。安全資産としての需要は全て金市場に向かわざるを得なくなり、価格上昇にもさらに弾みがつくことも考えられる。
また前述のようにインフレ圧力が本格的に強まってくれば、インフレヘッジとしての金に対する需要が復活することも考えられる。ここ10年以上インフレとは無縁の状態が続いてきただけに、市場がどのように反応するのかは正直なところ不明だが、以前のようにインフレヘッジとしての需要が強まるのであれば、2011年9月につけた過去最高値を更新、1トロインオンス2000ドルの大台まで値を伸ばすこともあり得るのではないか。
もちろん金相場の上昇も、永遠に続くわけではない。足元での一番のリスク要因は、やはりFRBの金融政策である。この先COVID-19の影響で景気減速懸念が強まれば、追加緩和期待が高まる中で投機的な金買いを改めて呼び込む可能性は高いと考える。だが、一方でインフレ圧力が急速に強まるなら、ジェローム・パウエル議長も簡単には追加緩和に踏み切れなくなる。
また足元で続いているFRBのバランスシート拡大も、いつまでも相場の押し上げ要因となり続けるわけではない。この先はレポ取引も縮小傾向に向うだろうし、月に600億ドルという短期債購入に関しても、4-6月期以降は継続される保証がないのが現状だ。FRBが追加緩和ではなく、もしインフレ抑制のために急速に引き締め方向に舵を切ることになれば、金市場からも資金が流出することになると見ておいた方が良い。
その場合には、株価の調整も一気に進むことになるだろうから、金の安全資産としての需要がそれ以上に強まるなら上昇が続くことも十分にあり得る。だが、市場がパニック的な状態に陥り、市場という市場から資金を引き揚げようという動きが加速するなら、金すらも安全資産として見做されなくなることも考えられるので、注意が必要だ。2008年のリーマンショック以降の株価急落局面では、金市場からも一時的に資金が流出、大きく値を崩したことは忘れない方が良い。
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