世界2大鉄道メーカー「統合」、どうする日本勢? 3位が4位を買収、「3強」の構図崩れ勢力図激変
アルストムとボンバルディアの統合話は数年前から市場の噂となっていた。今回の買収は決して唐突に決まったわけではない。
そもそも、世界の鉄道メーカーは合併の繰り返しだった。現在のビッグスリーという構図が確立されたのも2000年代に入ってからだ。その意味では、今回の合併もこれまでの歴史の延長とみることもできる。
とはいえ、超巨大メーカー、中国中車の誕生が両者の合併を後押しした側面は否めない。中国の鉄道車両は低価格が売りだが、近年はクオリティも改善されており、世界各国で中国中車とビッグスリーが競合する局面が増えてきた。中国に対抗するためには規模の拡大が不可欠だった。
アルストムは2017年9月にシーメンスの鉄道事業との経営統合を発表した。しかしこのときは欧州委員会が統合を認めず、破談になった。そのためアルストムは新たなパートナーに動き出した。
鉄道を売却、航空機に専念
シーメンスの鉄道事業とアルストムの統合のスキームは、シーメンスが統合後新会社の株式を50%取得し、新会社設立から4年後以降に2%分の株式を追加取得する権利を持つ。さらに取締役11人のうち6人はシーメンスが指名するという点で、力関係としてはシーメンスのほうが強かった。
今回は、アルストムによるボンバルディア・トランスポーテーションの買収という点で、アルストムが優位に立つ。アルストムにとっては、ボンバルディアと組むほうが自分の意見を通しやすいともいえる。
ボンバルディアにとってもメリットが大きい。ボンバルディアはカナダの航空機事業とドイツを本拠とする鉄道事業の2本柱で構成される。
航空機事業は十数人程度のビジネスジェットや50〜100人乗り小型旅客機「CRJ」シリーズが好調で業績を伸ばした。ところが社運をかけた110〜130人乗りの小型旅客機「Cシリーズ」の開発が思うように進まず経営が悪化。
ボンバルディアは航空機事業の資金手当てのため2015年に鉄道事業の一部の売却を決断。CDPQが投資を引き受けたという経緯がある。それでも苦境を脱することはできず、2018年にCシリーズ事業をエアバスに売却したほか、2019年にはCRJ事業を三菱重工業に売却するなど、主要な航空機事業を次々と売却、ビジネスジェット事業に特化することで生き残りを目指した。それでも財政状態は改善せず、さらに資金を捻出する必要があった。
航空機製造はカナダの国策事業でもあったが、ボンバルディアの鉄道事業の主要部分を占めるのは同社が2001年に買収したドイツの鉄道メーカー、アドトランツ。いわば外様だ。ボンバルディアが航空機事業を守るため鉄道事業の売却に踏み切るのは当然の成り行きだった。ボンバルディアのアラン・ベルマーレCEOは「鉄道事業売却後は財務基盤が強化される」とコメントする。
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