世界2大鉄道メーカー「統合」、どうする日本勢?

3位が4位を買収、「3強」の構図崩れ勢力図激変

CDPQにもメリットがある。買収の覚書には、アルストムがケベック州の首都であるモントリオール周辺に北米本社を設置し、研究開発拠点とするという一文が盛り込まれた。州内の雇用創出効果が期待できるのだ。CDPQはアルストムに7億ユーロ(844億円)を追加投資することが決まっているが、その資金はこうした雇用創出のために使われるのだろう。その意味では、当事者全員にメリットがあるスキームである。

では、はたして欧州委員会はこの買収を承認するのか。欧州委員会がアルストムとシーメンスの統合を認めなかった理由は、「市場における競争を著しく損なう」というものだった。とりわけ、高速鉄道と信号システムの2つの事業について両者が市場を独占しかねないことを懸念していた。

アルストムが製造する高速列車TGV(記者撮影)

そこでアルストムとシーメンスは、アルストムの信号システムとシーメンスの高速鉄道関連技術の一部を売却することで条件をクリアしようとしたが、欧州委員会は首を縦に振ることはなかった。

フランスの高速列車TGVの大半の製造を担ってきたアルストムと、同じくドイツの高速列車ICEの大半を一手に製造してきたシーメンスが高速鉄道事業を統合すると、欧州の高速鉄道市場で圧倒的に強い立場になる。

一方で、ボンバルディアが欧州向けに製造する高速列車は、TGVやICEの一部、日立製作所と共同で製造するイタリアのフレッチャロッサ1000などにとどまる。その意味で、シーメンスとの統合に比べれば、欧州委員会が否認するリスクは小さい。

ライバルはどう動くか

では、もしアルストムとボンバルディアの統合が決まった場合、ライバルたちはどう動くのだろうか。

ビックスリーから取り残された形となるシーメンスは統合相手探しに動き出すはずだ。欧州に営業基盤を築きたい中国中車も同様だ。同社は2016年にチェコの鉄道メーカー・シュコダの買収に動いたが、このときは株主の反対で破談になった。しかし、2019年にはドイツの中堅鉄道メーカー、フォスローの機関車事業の買収に成功した。2015年にはボンバルディアの買収に意欲を見せたこともある。今後も売りに出るメーカーがあれば手を挙げることは想像に難くない。

日本勢はどうか。日本の鉄道メーカー大手5社で首位の日立製作所は2018年度の鉄道事業売上高が6165億円。ビッグスリーに次ぐ位置にいる。英国事業の好調に加え、イタリアの鉄道メーカーと信号メーカーを2015年に買収したことで、規模だけでなく事業領域も拡大した。車両だけでなく電機部品、信号、システムなども製造し、保守も行う「フルターンキー」プレイヤーという点ではビッグスリーと同じだ。

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