投資家「高宮慎一」生んだ憧れとコンプレックス スタートアップは「最高にクリエーティブだ」
「何かと何かの間に立って橋渡しをする立ち位置がすごく好きだし、得意。あとは、クリエーターとかデザイナーとかに対する強烈な憧れとコンプレックスがあるんです。
自分は、ゼロから何かを生み出すことはできない人間。だけどビジネスプロデューサーとして、持続可能な仕組みをつくれば彼らに仲間に入れてもらえるし、貢献することができると考えました。ベンチャーキャピタルという仕事もベンチャーと金融の橋渡し。今思うと昔から立ち位置は変わっていないと感じます」
大学卒業後に戦略コンサルティング会社アーサー・D・リトルに就職し、6年勤務した後、ハーバード大学MBAに進むため退社。MBAを卒業した後、アメリカで就職面接を受けると「お前の本質的な強みは何だ」と問われ続けたという。ライバルの候補者も同じハーバードMBA卒、元マッキンゼーといったつわものだらけだ。アメリカ人で同じようなバックグラウンドの人間が競争相手だ。表面的な経歴では差別化できない。
「そうなったときに、自分の生い立ちに根差した、本質的なカルマ(業)みたいなものは何だろう、と考えました。自分がしなきゃいけないことって何だろう。その軸で考えると、海外と日本で育った自分だからこそ、日本をベースに、日本のよいものを海外に出す、それが自分のなすべきことなんじゃないかと思いました。
また、起業家がプロダクトを作るのってすごくクリエーティブな作業だし、さらに言ってしまうとスタートアップを作ることそのものが最高にクリエーティブ。自分自身がクリエーターになれなくても、クリエーティブを組織化、仕組み化して、スケールさせて、さらには持続させるところで貢献することはできる。すべてがつながった感があって、ベンチャーキャピタリストはすごく納得感がある立ち位置でした」
「フェイクユニコーン」は日本では生まれない
日本国内のベンチャー投資は、近年ますます活発化している。それに伴い、ユニコーン企業(一般的に評価額10億ドル以上、創業20年以内の非上場ベンチャー企業)と呼ばれる大型ベンチャーの数も増え始めた。
かつてのメルカリを筆頭に、AI開発のプリファード・ネットワークス[想定時価総額(以下同)3516億円]、プラスチック代替素材のTBM(1218億円)、情報アプリを提供するスマートニュース(1128億円)などだ(フォースタートアップス「国内スタートアップ想定時価総額ランキングレポート2020.2」より)。
その一方で、アメリカや中国では、評価額だけが吊り上がり、実態が伴わないベンチャー企業が「フェイクユニコーン」と呼ばれ、揶揄されるようにもなった。なぜこのような乖離が生まれるのか。高宮氏は「日本と世界を分けて考えるべき」としたうえで、世界的には2つの要因があると話す。
まず1点目は、ソフトバンク・ビジョン・ファンドに代表されるような積極的な投資が挙げられる。ビジョン・ファンドは10兆円のファンド規模で、積極的な投資姿勢で知られ、「ISO(Initial Softbank Offering)」と言われるほど。ほかのVC(ベンチャーキャピタル)の1.5倍から2倍といったバリエーション(企業の価値評価)をつけ、200億円、300億円といった巨額投資を行うことも珍しくない。すると当然、ユニコーンも生まれやすくなる。
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