投資家「高宮慎一」生んだ憧れとコンプレックス スタートアップは「最高にクリエーティブだ」
グループの投資額が累計1兆円を超える大型投資先で、コワーキングオフィスを展開する「WeWork」の上場延期や、ホテル予約サイト「Oyo Rooms」の低迷などがその一例だ。
とくにWeWorkに関する損失が与える影響は大きく、今年2月12日に発表された2019年度第3四半期(10~12月期)決算でも、営業利益は全体で前年同期比99%減の25億8800万円。純利益も同92%減の550億円と奮わなかった。同日の決算会見で孫正義社長はビジョン・ファンド2号については規模を縮小し、出資予定額の約1080億ドルを白紙に、投資期間の短縮化も検討すると述べた。
2点目の要因は「IPOラチェット」
2点目の要因は、アメリカでは実現可能な投資手法「IPOラチェット」だという。IPO(新規株式公開)時の1株当たりの株価が、投資家が投資した際の1株当たりの株価に満たない場合は、不足分の株価を埋める形で当該投資家の株数を増やすことができる。とくに上場間近のレイトステージでは、IPOラチェットによって投資家にリターンが保証されるため表面的な評価額が意味をなさなくなり、思い切った投資が可能になる。
日本では、IPOの制度上この手法を使うことができない。そのため投資家は、投資実行時のバリュエーションをシビアに見極める必要が出てくる。結果的に、企業の評価額が不当に高騰しにくくなるため、相対的にフェイクユニコーンが生まれにくいのが日本のベンチャー投資環境だという。
「日本には東証マザーズがあるという地の利があります。時価総額30億円くらいでも上場することができますし、時価総額100億円以下でのIPOが多くなっています。
かつては未上場での資金調達は、数億円がやっとでした。ましてや10億円に届くのは本当に大変でした。そこで『10億円規模の調達をしたければ、早くマザーズに上場しよう』という世界観が生まれました。
しかしここ数年でVC側も層が厚くなり、ベンチャーのエコシステムも発展してきました。今までは『1000億円で上場したい』って掛け声は上がっていましたが、実際には日本国内のベンチャーでは前例がありませんでした。そんな中で、ロールモデルを作ったのが日本初のユニコーン企業『メルカリ』でした」
「未上場の間に100億円以上調達して、1000億円で上場する。この動きはもはや逆戻りしない本質的な動きだと思います。日本国内でも、時価総額1000億円の企業、つまりユニコーンを生み出せる。実際メルカリの後に『Sansan』『freee』と続き、事業を大きく育ててから上場するという流れができてきた。日本のベンチャーエコシステムが、ようやくシリコンバレーと同じステージに進化してきたと思うと、とても感慨深いです」
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