投資家「高宮慎一」生んだ憧れとコンプレックス スタートアップは「最高にクリエーティブだ」
ベンチャーキャピタリストとしての高宮氏のキャリアは、すでにカウントダウンが始まっている。ファンドを1つ立ち上げた場合、ファンド期限が10年なのが一般的だからだ。
「自分が現役のうちに、あともう3本できるかなとか、考えてしまいます。ただ、思うのは仕事とプライベートを二項対立的に分けると非常にもったいない。人生の7分の5を使う仕事で、いかに好きなことをやるか。好きなことをやり続けて、結果がついてこなくても好きなことをしていたから幸せ、やり続けているうちにたまたまうまくいって結果もついてきたらラッキー。それくらいのほうが、人生幸せなんじゃないかなと思います」
40代からの挑戦
40代は一般的に「ミッドライフ・クライシス(中年の危機)」を迎える年代。終身雇用型の企業に勤めている場合、よくも悪くも今後の人生を見通すことができてしまうかもしれない。しかし最近は「終わりが見えてきたからこそ頑張れる」「いくつになっても成長はできる」という40代の声もよく聞くようになった。高宮氏もそう考える1人だ。
「昔、グロービスが欧米で30年以上の投資実績を持つ投資ファンド、エイパックスと提携したんです。そのファウンダーのアラン・パトリコフは、アップルにも投資した東海岸の伝説的VCです。その後、エイパックスはメガバイアウトのほうにいってVCはやらなくなってしまいました。
すると、その時点で72歳だった彼は『生涯いちベンチャーキャピタリストでいたい』と言って、自らが創業したエイパックスを去り、新しいVCを立ち上げたんです。『自分がキーマンでコミットして、10年間はやり続けます』と宣言して。
来日したときなんか『ほら見ろよ、いまこんなイケてるアプリに投資してるんだ』って僕にスマホを見せてくる。80歳近いおじいちゃんが、最新のアプリを触っているし、そこに投資しているんです。その前のめり感、生涯現役な感じが僕はすごく好きです」
「やっぱり僕は、根っこは帰国子女なんで、自分を受け入れてくれた社会に貢献したいって思いがある。どこへ行っても異邦人的に感じちゃって、何者でもない感があって、その中で『仲間に入れてもらうためには貢献しなければいけない』という強迫観念もね。
だから周りに価値を示せなくなったら引退しなければいけないと思っているんですが、引退しなくてもいいように自分自身が成長し続けたいとも思っています。年をとって、それまで蓄積してきたネットワークなどの資産に、フローで成長していくスキルを掛け算する。そうしたら、さらに大きなインパクトを出すことも不可能ではないはずです」
高宮氏の「終わり」はまだまだ見えてくることはなさそうだ。
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