進むリアルタイム決済、遅れる全銀システム 平日7時間だけの即時決済は、もはや時代遅れ

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欧米の銀行がファスターペイメントへの対応を進めるのは、「ドット・フランク法やボルカールールの導入など金融規制の強化によって、事業の多角化よりも、(資金決済など)コアビジネスへの集中に向かわざるをえなくなった」(米銀関係者)からだ。

そうした中で、日本の銀行システムが時代遅れになりつつある。口座振り込みなどの資金決済分野で、日本の銀行がこれまで世界的に高い品質レベルを誇ってきたことは間違いない。

全国の銀行や信用金庫、信用組合などをネットワークでつなぐ全国銀行データ通信システム(全銀システム)を構築。平日の一定時間内であれば即時決済でき、その精度の高さが国際的に評価されてきた。だが、今後は24時間365日の即時決済が世界標準になるだろう。

日銀ネットは対応可能

日本でもその下準備は進んでいる。全銀システムの決済データを受け継いで、銀行間決済の最終処理を行う日本銀行金融ネットワークシステム(日銀ネット)は、すでに実質24時間稼働する態勢になっている。全銀システムを24時間決済できるように改良すれば、ファスターペイメントを提供するインフラは出来上がる。

問題は、全銀システムに接続する個別銀行のシステムの対応だ。全銀システムが24時間稼働するようになれば、各銀行が個別で運用しているシステムも対応させる必要がある。収益力が落ちている地域金融機関などは、設備投資が増えるのを嫌い、全銀システムの改良そのものに反対する可能性がある。

全国銀行協会は新年度からファスターペイメントの議論を始める。そこでいかなる方向が打ち出されるのか。顧客の利便性向上を優先するならば、24時間365日化の流れは止められないだろう。

撮影:ロイター/アフロ =週刊東洋経済2014年3月22日号〈3月17日発売〉 核心リポート03)

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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