数字至上主義は仕事を退屈にする
「“結果を出してなんぼ“という数字至上主義では、働くのが楽しくなくなります。契約を取れれば報酬アップだけれど、取れなければ減収、ひどいときはクビというように“恐怖”で人を動かす仕組みは、一時的にはアドレナリンが出て数字が上がるかもしれない。しかしそれが長く続くと疲れてしまって、働くのがイヤになるんですよ。それよりはお客様の笑顔や、上司からの褒め言葉、同僚からのねぎらいや励ましなど、“喜び”をエネルギーにしたほうが、内発的な動機となって長期的にモチベーションを維持することができる」
このように語る武樋社長が目指したのは、同僚が契約を取ってきたらそれをねたむのではなく、自分のこととして喜べるような会社。そればかりか自分のノウハウをどんどん周囲に伝えていくことができる。一言でいうなら「競争よりも共感」という会社でした。
新しい経営理念を掲げた当初は、古株社員からの反発もあったといいます。いちばんの稼ぎ頭だった営業マン2人が退社し、売り上げは3割落ちてしまいました。それでも武樋社長は「支え合うチームづくり」という目標を、しぶとく掲げ続けます。その方針が正しかったことは、なによりも現在の同社の姿が証明しているでしょう。
武樋社長は自社の特徴を「窮屈でないこと」だと言い、「私語から人間関係が生まれる」という考えから、社員たちに「どんどん私語をしなさい」と指示を出しています。たくさん言葉を交わすからこそ、お互いの小さな変化にも敏感になるし、仕事上の相談やアドバイスも頻繁にできるというわけです。組織はフラットで、お互いにあだ名で呼び合い、店長でさえも「あっこちゃん」「ベッチー」「なおこ」などと呼ばれています。
また社員同士のコミュニケーションを高める仕組みとして、「嬉メール♪」「誕生日のベタ褒め」「○○会」があります。「嬉メール♪」は自分がスタッフやお客様から褒められるなど、何かいいことがあったとき、それをメールで発信してシェアすること。「誕生日のベタ褒め」は、誕生日を迎えた人に全員でお祝いの言葉をかけたうえ、湯水のように「笑顔がステキ」「いつも元気なところがいいね」など褒め言葉を浴びせかけるというイベント。半分お世辞とわかっていても、やはりうれしいものだそうです。また社内には「女子部」「ヤング会」「ミドル会」「おんちゃん(おじさん)会」などの会があり、店舗の垣根を越えたコミュニケーションを図っています。
このようにとても親密なのですが、決してただの仲良し集団ではなく、むしろ全員でひとつの目的に向かって進む精鋭チームという印象でした。高知東店の過去最高の成約率は59%、南国店はなんと80%。これは10人来店したら8人が賃貸契約を結んだということ。さらには一度利用したお客様がリピーターになってくれる率も高く、お客様が別のお客様を紹介してくださることも多いそうです。
歩合制や厳しい目標を課すなど、「外発的な動機」を主とする会社は多いものです。そういう会社では「~~してはいけない」という性悪説でルールが成り立っています。しかし、それでは女性は育たないと思うのです。数字に対する恐怖があったり、「~~してはいけない」と行動を制限されたりすると、自発性や創造性が生まれません。その結果、女性の多くは「営業は精神的、肉体的に続けられないから」と辞めてしまうのです。ファースト・コラボレーションはこの3年間、退職者ゼロ。これは本当にすばらしいことだと感動しました。
次回はいよいよ、働く女性の最大の問題である出産・育児と仕事の関係について、同社の取り組みをご紹介します。ご期待ください。
取材協力:株式会社ファースト・コラボレーション
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