「配偶者居住権」が招きうる遺産相続のトラブル 4月の民法改正で登場、よくわかる中身とは
そして、現実社会では、家族円満な家庭ばかりではない。子どもたちが、肉親の配偶者居住権を使っての居住に対して、不満を抱いているケースも想定される。このような場合には、本音では肉親を追い出して自宅を売りたい子どもたちが、本心を隠しながら、配偶者居住権を持つ高齢の肉親に対して介護施設への転居を強く促し、肉親もしぶしぶ受け入れて自宅から退去し、結果として子どもたちが売却代金を受領するケースもありえる。
このように、新しい民法の条文では、きちんとした「権利」として記されていながらも、実際には権利として保護されない可能性を秘めているのが、「配偶者居住権」の問題点である。
不安はこれだけではない。この「配偶者居住権」の負担がある不動産自体が、市場で取引売買される可能性も多いに有りえるのだ。
2018年に厚生労働省が発表した簡易生命表によると、男性の平均寿命は81.09歳、女性が87.26歳だ。
もし仮に、「配偶者居住権」を行使して80歳の女性が居住している住宅があった場合、投資家の目線で見ると、いずれは女性が死亡して配偶者居住権が消滅し、将来的には完全な所有権物件、つまり配偶者が亡くなるの待つことができれば、時間の経過によって100%の確率で一般的な中古物件になるのだ。その期間を見越しての仕入価格であれば、不動産投資物件としてはおいしい物件とも言える。
例えば、4000万円の配偶者居住権付き建物を購入し、居住者の死亡後に5000万円で売却できるのであれば、配偶者が居住している期間の固定資産税等は居住者が支払うため、物件を所有するコストは少ない。配偶者居住権消滅後の売却によって得られる1000万円の収益を見越して、不動産投資に用いられる可能性は高いのだ。
総じてこれらの権利が設定された物件は、市場価格よりも抑えられた価格で取引されるケースが多くなるであろうし、市況の変化に伴う価格の下落があってもなお、収益を得やすい傾向にある。
思わぬトラブルが起こり現場が混乱する恐れも
2020年4月に控えた民法の改正。より現代社会に則した形の条文に書き換えられているが、「これまでに想定していなかった思わぬトラブルが発生し、一般の方はもちろん現場も混乱を招く恐れがある。どのような状況になるかは現時点で不透明」(大城氏)と言えるであろう。
民法改正が迫ったこの機会に、資産の状況と改正事項を照らし合わせて、幸せな相続をするための方法をいま一度考えられてみてはどうだろうか。
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