アメリカ大統領選、大荒れニューハンプシャー バイデンは脱落、穏健派レーンは混戦模様に

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アメリカ政治では大統領を国民が選ぶ際に「民主党支持者は(候補者に)恋に落ち、共和党支持者は共に並ぶ(Democrats fall in love, Republicans fall in line)」と言われている。これまで大統領選の本選を制してきた民主党候補は、ジミー・カーター大統領(1976年大統領選)、ビル・クリントン大統領(1992年)、バラック・オバマ大統領(2008年)など、いずれも、ワシントンを破壊しようとするアウトサイダーで民主党支持者が恋に落ちた結果であった。初当選時には、いずれも対抗馬よりワシントンでの経験は浅かったか、あるいはまったくなかった。

一方、民主党公認候補に指名されるも、共和党候補に負けたのはウォルター・モンデール(1984年)、マイケル・デュカキス(1988年)、アル・ゴア(2000年)、ジョン・ケリー(2004年)、ヒラリー・クリントン(2016年)などいずれもエスタブリッシュメント候補であり、民主党支持者は恋に落ちたのではなく、むしろ勝つために党の団結を優先し共に並ぶ選択により指名した候補であった。

穏健派で旋風を起こせる人物はいるのか

つまり、民主党が直面している最大の課題は、民主党支持者の多くが特定の候補に恋に落ちるような動きが広がらず、いずれも支持者は一部に限られてしまっていることだ。アウトサイダーのサンダース候補は幅広い民主党支持者の心をつかもうとしているものの、限界がみられる。民主党全体では左派よりも穏健派が多いのである。

したがって、ニューハンプシャー州予備選で勢いに乗るブティジェッジ候補あるいはクロブシャー候補が、今後、旋風を起こし、より幅広い層の民主党支持者の心をつかむことができるかかどうかが、焦点だ。

トランプ大統領のような右寄りのポピュリストに対し、民主党はどのような候補であれば本選で勝利できるのか。サンダース候補のような左派ポピュリストで逆サイドから攻撃するのが望ましいのか、あるいはブティジェッジ候補やクロブシャー候補、ブルームバーグ候補のような穏健派で中央から対抗するのが望ましいのだろうか。

渡辺 亮司 米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長

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わたなべ りょうじ / Ryoji Watanabe

慶応義塾大学(総合政策学部)卒業。ハーバード大学ケネディ行政大学院(行政学修士)修了。同大学院卒業時にLucius N. Littauerフェロー賞受賞。松下電器産業(現パナソニック)CIS中近東アフリカ本部、日本貿易振興機構(JETRO)海外調査部、政治リスク調査会社ユーラシア・グループを経て、2013年より米州住友商事会社。2020年より同社ワシントン事務所調査部長。研究・専門分野はアメリカおよび中南米諸国の政治経済情勢、通商政策など。産業動向も調査。著書に『米国通商政策リスクと対米投資・貿易』(共著、文眞堂)。

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