2020年1月21日、「中国科学:生命科学」英語版はオンラインで掲載した研究論文において、武漢のコロナウイルスが人に感染する仕組みを明らかにした。武漢のコロナウイルスは、S-タンパク質が人のACE2と相互に作用する分子の仕組みを通して、人の呼吸器官の表皮細胞に感染する。
研究論文を執筆した研究者の1人である中国科学院上海パスツール研究所の研究員 郝沛によると、「人体に作用する仕組みが一致しているところから見て、武漢のコロナウイルスの感染能力はSARSウイルスと同程度であると考えられるが、感染能力はウイルスの拡散度合に影響する要素の1つにすぎない」という。さらにウイルスの複製、ウイルスが拡散する経路など、ウイルスの拡散度合に影響を及ぼす要素はほかにもある。
1月22日、北京大学、広西漢方薬大学、寧波大学および武漢生物エンジニアリング学院の研究者たちが連名で、「Journal of Medical Virology」のオンライン版で研究論文を発表した。その研究によれば、新型コロナウイルス2019-nCoVは、コウモリのコロナウイルスと起源が未知のコロナウイルスとの間で遺伝子が組み替えられることによって発生したウイルスであるらしい。
では、結局のところ、新型コロナウイルスが人工で製造された、遺伝子工学の産物である可能性はあるのだろうか? 財新記者は多くの専門家や研究者をインタビューしたが、彼らの一致した判断は、「不可能」だ。
遺伝子工学を起源とする証拠はない
トレバー・ベッドフォードは財新記者に、新型コロナウイルスが遺伝子工学を起源とすることを示す証拠はないと語った。彼の解説によれば、コウモリの身体に見られるウイルス(RaTG13コロナウイルス)と相互に比較すると、新型コロナウイルスに存在する遺伝子の差異は自然進化によるものと一致する。
「もしゲノム編集(遺伝子編集)したウイルスであれば、大量の遺伝物質を置換する必要がありますが、今のところその種の痕跡は観察されていません。反対に、自然進化したと思われる、まばらで分散的な変異しか見られません」
トレバー・ベッドフォードはオープンソースのウェブサイト(nextstrain.org)を開設し、各種の病原体の遺伝子配列についての分析と可視化を行えるようにした。
その中には以前から知られているコロナウイルスのファミリー(コウモリ、ハクビシン、SARS)の遺伝子配列の系譜から、世界的なインフルエンザウイルスの共有データベースGISAID(Global Initiative on Sharing All Influenza Data)で共有されている新型コロナウイルス関連肺炎患者53人のウイルス遺伝子の全配列が含まれている。
ベッドフォードは、ウイルス間のヌクレオチドの差異とほかのコロナウイルスの仮定突然変異率の推計を結び合わせて、RaTG13コロナウイルスと新型コロナウイルスという2種類のウイルスは「25~65年前に1つの共同の祖先から生まれた」としている。つまり、RaTG13ウイルスが新型コロナウイルスへと変異するには数十年の時間が必要だろうということだ。
ベッドフォードの分析によれば、RaTG13コロナウイルスと新型コロナウイルスの間には1100個近いヌクレオチドの差異が認められる。これと比較できるのは、ハクビシンのコロナウイルスと人のSARSウイルスとの間に認められる差異がたった10個のヌクレオチドにすぎないという点だ。
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