ひきこもりの「社会復帰を妨げる」日本の危うさ

安易な「自己責任論」で済ませてはいけない

また、東京都のインターネットカフェ・漫画喫茶等のオールナイト利用者(946人)を対象とした調査では、オールナイト利用者の男性割合が85.9%。そのうちで住居を喪失しているのが97.5%、さらにその割合のうち、住居喪失不安定就労者97.8%(女性割合は14.1%、住居喪失者2.5%、住居喪失不安定就労者2.2%)であり、年齢は30〜39歳が29.3%、ついで20〜29歳が27.8%、40〜49歳が18.7%、50〜59歳が17.3%、60歳以上が4.9%という衝撃的な結果もあります。

住む場所がなく、漫画喫茶に寝泊まりしている人が全世代にいるのです。もはや、日本が「総中流社会」だというのにはあまりにも無理があることが、おわかりいただけると思います。

生活が苦しく病院にもいけない若者たち

さらに、次のようなデータもあります──。貧困や格差をなくそうと活動している「エキタス」という市民団体が、若者にインターネットで「最低賃金、時給1500円が実現したら、何をしたいですか?」と問いかけたところ、「病院に行きたい」と答えた人が最多で、約3割にも及んだそうです。

これが日本の現実です。多くの若者が、生活が苦しいために病院にも行けずに、健康を犠牲にしてまで働いているという、胸が痛くなるような実態が見えてきます。

非正規社員の激増は、日本をかつての「一億総中流社会」から格差社会へと変え、多くの貧しい人たちを生み出しました。この格差社会と貧困層の増大もまた、人々がひきこもることの非常に大きな要因だと考えています。

つまり、お金がなくて生活が苦しくなると、多くの場合、仲がよかった友人とも距離を置くようになり、孤立していきます。孤独になるなかで、自己肯定感は摩滅していき、自信を失い、ポジティブなことは1つもないように感じて、人生に希望を見いだせなくなっていくのです。

このような状態に陥ると、他人との情緒的な接触が大きな負担に感じられて、人間関係を避けているうちにひきこもっていくわけです。また、いったんひきこもってしまうと、孤独のなかで孤立していき、支えてくれる人もいないまま、多くの人たちが20年、30年と長期間ひきこもり続けることにもなるのです。

これまで私どもは約21年間、ひきこもり支援の現場に立ち、さまざまなご家庭の方々とお会いしてきました。多くの方とお話しすればするほど、雇用の問題とひきこもりの問題が密接に関係していることを強く感じるようになっています。

終身雇用制の終焉によってもたらされたのは、雇用形態の変化や雇用環境の悪化だけではありませんでした。それは、企業による社会福祉の崩壊も意味すると、私は考えます。

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