ひきこもりの「社会復帰を妨げる」日本の危うさ 安易な「自己責任論」で済ませてはいけない

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そのため、いったん解雇されたり、退職したりすれば、再チャレンジの道が閉ざされてしまいがちで、このことがひきこもる人を増やし、また、ひきこもりからの脱出を阻むことになっているように感じます。

雇用環境がこのような厳しいものになってしまったのは、終身雇用制の崩壊にあると考えています。では、そもそもなぜ終身雇用が崩壊し、そして、その結果、なぜ雇用環境が悪化してしまったのでしょうか──。

なぜ「終身雇用制」は崩壊したのか?

敗戦後の日本社会を支えてきたものの1つが、終身雇用制だと言えます。終身雇用制のもと、人々はいったん就職したら、会社が潰れない限り、定年まで勤め続けられました。そして、多くの場合、終身雇用制は年功序列とセットになっていたので、勤務年数に応じて給料も上がっていきました。

働く多くの人が、突然解雇される不安もなく、安心して働けて、給料も年々上がるという、今からすると夢のような待遇のもと、日本は「一億総中流」といわれる、格差の少ない豊かな社会を実現させたのでした。

ところが、バブル経済が破綻した後、終身雇用制は立ちゆかなくなります。バブルが崩壊したのが1991年。1997年には長期不況に突入します。長引く不況のなか、グローバル化の激しい国際競争にさらされることにもなった日本の企業は、しだいに終身雇用制を維持するための体力を失っていきます。

そして、21世紀に入ると、多くの企業が生き残りをかけて、次々に解雇や早期退社などリストラを断行し、日本の終身雇用制は終焉へと向かい始めたのです。

「失われた20年」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。日本は、バブル崩壊から20年以上経った今日もいまだ不況から抜け出せずにいます。令和元年には、かのトヨタ自動車の社長までが「終身雇用を守るのは難しい局面に入ってきた」と、終身雇用の限界について言及しています。

終身雇用制で守られる時代は終わりを告げ、長く勤めた人でも、表現はよくありませんが、簡単に「切り捨てられる」世の中になってきたのです。

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