日テレが、Hulu買収で仕掛ける「動画革命」 船越雅史・コンテンツ事業部長に聞く(上)

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――「全世界のコンテンツを集める」ということは、国内各局のテレビ番組も配信するということでしょうか? TBSは、昨年11月にHuluと包括的契約を結び、現時点ではHuluのコンテンツ1万3000~1万5000本のうち2000本強がTBSの番組です。これらの番組の視聴データを同業他社に取られるのは、いわば自社商品の強みと弱みを握られることになると思います。TBSだけでなく、アニメを中心に配信しているテレビ東京など他局が、Huluでの配信を続けるかどうか疑問です。

そこはわれわれもいちばん心配しているところです。日本テレビやHuluとしてではなく、私の個人的な考えとして解決策をひとつ挙げるならば、「データの共有」がありますよね。民放キー局とNHKが参加している動画配信プラットフォーム「もっとTV」では、すでに情報を開示し合って一緒にやっていきましょうと話し合いを進めているので、同様のことがHuluでもできればいいなと思います。

テレビ局各社さんにも「日本テレビのHuluではなく日本のHuluにする」という思いを理解してもらうべく、お願いしようと考えています。これまで提供している会社にはさらに枠を広げていただき、ハリウッドのコンテンツはより新しいものを増やしていきたいですね。

Huluの魅力は、マルチデバイス対応

――YouTubeやGyao!などの動画配信事業者に、コンテンツを提供しているだけなら、ほぼノーリスクで配分を受け取り、収入の拡大が見込まれます。大きなリスクをとってでも、Huluを育てるという決断は、日本テレビにどのようなメリットを生み出すのでしょうか。

いずれ、テレビのコンテンツは「いつでもどこでも」見られるようにしなければいけないという考えがありました。今の地上波、BS、CSという伝送路では、録画することでいつでも見ることはできますが、どこでもは無理。

Huluの魅力はなんといってもマルチデバイスであるということですよね。dビデオさんがスマートフォン向け動画配信で会員を伸ばしていますが、われわれテレビ局はテレビで見られることを意識して制作しています。今後はその概念自体崩れていき、各デバイス、伝送路ごとに、適したコンテンツというものができていくのかもしれませんが、テレビ局として、そこは矜持として持ち続けるべきものだと思います。

子ども部屋など各部屋にテレビがある時代ではなくなり、若い人たちには動画を見るのはスマホやタブレットで十分だという方が増えています。一方で、“茶の間のテレビ”の周りに家族が集まる一家だんらんは復活しているようです。毎週日曜日20時台の「世界の果てまでイッテQ」の視聴率がいいのが、その証拠ですね。深夜のアニメなどは、自分の部屋でスマホやタブレットで見る。年代別に、場面に応じた視聴の仕方が想像されます。

多様化する視聴形態に合わせてより多くの人々に番組を届けたいと考えれば、テレビの画角で見るのがいちばんいいように作られた番組を、テレビでもスマホでもシームレスに見ることができるHuluのテクノロジーは魅力です。

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