日テレが、Hulu買収で仕掛ける「動画革命」 船越雅史・コンテンツ事業部長に聞く(上)

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Huluが日本での事業を開始すると、国内のアニメ制作会社などが配信を開始し、いい利率でコンテンツが取引されているようだというウワサを耳にするようになるのですが、2011年の時代背景は、今とはまったく違っていたのです。

船越雅史(ふなこし・まさし)
日本テレビ放送網 コンテンツ事業局コンテンツ事業部長
1986年早稲田大学政治経済学部卒業後、日本テレビ放送網に入社。アナウンサーとして、プロ野球、ボクシング、箱根駅伝などのスポーツ中継、ニュース、情報番組を担当。その後、ライツ審査部、ライツ事業部を経て現職。

DVDが売れなくなるのではないか、地上波の視聴率を低下させてしまうのではないか、有料とはいえ、全国どこでもいつでも見られるようになったら、地方のネットワーク各局が厳しい状況に追い込まれるのではないか――。コンテンツ事業部としては、配信事業を大きくするため、Huluと取引したいと思っても、グループ会社全体を考えると踏み込めなかった。

それが、この2年の間に、動画配信をするとDVDが売れる、見逃したドラマを動画配信で見て、地上波の放送に視聴者が戻ってくるという流れがあるという、その効果に理解が進み始めました。

後ろ向きだったHuluでの配信に対する考え方が、話し合いを続けるうちに「どのように番組をHuluに出したらいいか」という視点に変わり、その流れの中で2012年11月には米国Huluから「出資して一緒にやりませんか」という打診がありました。そこで「何%出資するか」の話し合いを続けていたら、最終的に「いっそ100%出資して、日本のHuluを経営しませんか。Huluのブランドとテクノロジーは提供しますよ」と、降って湧いたようなご提案をいただき、今回の事業買収というかたちに落ち着いたというわけです。

社長自らプロジェクト会議に参加

――米国の動画サイトの利用動向を見ると、YouTubeが圧倒的に大きく、次にネットフリックス。アマゾンの追い上げもあり、Huluは激しい競争にさらされています。最近では親会社のNBCユニバーサル、FOXエンターテインメントグループ、ディズニーABCテレビジョングループがHuluに対して7億5000万ドルの増資を行ったばかりです。この動きと、唯一の海外進出先である日本の事業を手放すこととは、何か関係があるのでしょうか。

あくまでもこれは私の個人的な想像なのですが、米国の事業に集中したいということではないでしょうか。日本の市場は、コンテンツホルダーであるテレビ局に任せたほうが、Huluというすばらしいプラットフォームを生かし、売り上げを伸ばすことができると判断されたようですね。ただ、Huluらしい作品を提供することと、ブランドイメージを大切にすることは、何度も念押しされました。

――Huluの事業をホールディングス傘下ではなく、日本テレビ放送網の子会社にするのはなぜですか?

われわれにとって最強のコンテンツは、地上波放送の番組だからです。まずはこの、地上波放送とのシナジーを最大限に追求しようと考えて、日本テレビ放送網の子会社にすることにしました。ただ、将来的にはわかりません。

3月3日に社内で今回のHuluプロジェクトの第1回目の会議があったのですが、その場には社長の姿もありました。全社横断的なプロジェクトとはいえ、社長がプロジェクト会議に出席するのはまれなことです。その場で社長は、「Huluという動画配信プラットフォームは、いずれは地上波、BS、CSに並ぶ第4の伝送路になると考えている。何がなんでも成功させたい。そのためには、日本テレビが儲けるためという小さな了見でやるんじゃない。日本テレビのHuluではなく、日本の動画配信プラットフォームとして育て、全世界のコンテンツをそこに集めて利用者に届けるのだ」と言っていました。

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