34歳天才経済学者が私有財産を否定する理由

データ搾取から移民までラディカルに考える

・都市全体を売りに出す(土地が有効に活用されるようにする)
・世の中の全ての財産を共有化して、使用権をオークションにかける(私有財産制をやめてみる)
・自分の財産評価を自己申告制にして税金を支払う。より高い財産評価をする人が現れたら所有権が移転する(独占の弊害を取り除く)
・投票権を貯められるようにする。そして、自分にとって重要な課題のときに、貯めた投票権を集中的に投票する(一人一票よりも投票者の選好の強さを反映できるようにする)

どれも、「それは思いつかなかった!」という声が聞こえてきそうなクリエイティブな政策の数々である。

都市全体を見渡せば、もっとも景観のよい丘の上にスラム街ができていることがある。これでは観光客も呼びにくい。ある人がいったん土地を私有してしまうと、別の人がその土地のより有効な活用を思いついても、それを実現できなくなる。環境問題にとても関心があって、その課題に強くコミットしたい人も、選挙ではそうでない人と同じ一票しか投票できない。

このような事態は非効率ではないだろうか。これは、市場の失敗なのだろうか。より強い公的な介入がなければ、解決できないのだろうか。そうではなく、よりラディカルに市場の力を使うことで状況を改善できるというのがこの本の面白さだ。

では実際どうやって、という疑問が当然わくだろうが、これらの提案には経済学の詳細なロジックが伴っている。そして、読み手が「それはうまくいかないのでは」と思った次の瞬間には、その反論が用意してあるという形で議論が進む。

私有財産制の問題、独占の問題、投票制度の問題などについて、思考が行き詰まってしまった方々には、クリエイティブなアイディアを得るためにぜひ、一読していただきたいと思う。

「データ労働者組合」を作ろう

近年、GAFAなどのデジタルプラットフォームがその巨大化とともに、ビジネスだけでなく、社会に大きな影響を与えている。そうしたデジタルプラットフォーマーとビジネスや社会でどう付き合っていくべきか、誰にとっても関心のあるところだろう。

本書によれば、フェイスブックが毎年生み出している価値のうち、プログラマーに支払われる報酬は約1%にすぎないそうだ。そして価値の大半は、「データ労働者」であるユーザから無料で得ているのだという(一方でウォルマートは生み出した価値の40%を従業員の賃金に充てている)。

この問題をどう考えればいいだろうか。個人情報の保護を強化しよう、あるいはプラットフォーマーという優越的な地位の乱用を規制しよう、というのが従来的なやり方だろう。

一方本書の著者らは、デジタルプラットフォーマーに供給されるデータはわれわれの「労働」であると説く。となると、われわれは、データ提供という「労働」から対価を得るために、「データ労働者組合」を作ってはどうかという。非常に興味深い概念である。

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