「Fukushima50」は映画人の覚悟がつまっている 福島第一原発事故当時の最前線を忠実に再現

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その再現度は、実際に福島第一原子力発電所で勤務した経験のある人が、あまりにも同じ光景だったため、感動していたほどだったという。若松監督も「このオープンセットに立ち会った俳優もスタッフも、この映画への覚悟ができたと思います」と自負する。

また、総理が福島第一原子力発電所に視察に来るシーンでは、陸上自衛隊の協力のもと要人輸送ヘリ“スーパーピューマ”が登場。さらにトモダチ作戦のシーンの撮影は、アメリカ軍の協力により、横田基地での撮影が実現した。

その過程は困難を極めたというが、細部に至るまで真実を正しく伝えようとするスタッフの熱意を伝え、日本映画史上初となるアメリカ軍の協力を得ることができた。基地内で勤務する兵士もエキストラとして参加することとなった。

過程を検証し後世に伝える材料にしてほしい

昨年の4月17日に行われた本作のクランクアップ会見の場で、渡辺謙はこう語っていた。

「誤解を恐れずに言いますと、『硫黄島からの手紙』という映画をやったときに、自分も含めてですが、この国は、論理的に検証して、後世に何を残していくかということがあまり上手ではない国だなと感じていました。それは恐らく、原発事故でもそういうことになる気がしてならないんです。

主演で福島第一原発1・2号機当直長・伊崎利夫を演じる佐藤浩市 ©2020『Fukushima 50』製作委員会

確かにこの映画は原発がいいとか悪いとか、そういうことだけを謳う映画ではないと思いますが、そこであったことを論理的に検証して、それが未来にとって。僕たちの子ども世代、孫の世代に、これが社会にとってどうなのかということを検証する材料にしてほしいと思っていますし、いまだに福島は(復興どころか)ゼロにもなっていない。そういうところがあるという現実を忘れないでいてほしい」

一方の佐藤浩市も「最近ニュースでも福島のことがまた取り上げられていますが、まだ何も終わっていないどころか、まだ何も始まっていないかもしれない、それを来年のオリンピックイヤーに、もう一度皆さんと振り返りつつ、前を向くために何をすべきか、何を考えるべきか。自分も含めて、皆さんで考えていただきたいなという思いです」と思いを込める。

福島第一原子力発電所の廃炉作業は現在でも続いており、作業が終了するのは30年後とも40年後とも言われている。いまだ故郷に戻れないでいる人も多い。だからこそこの事故を風化させずに、次世代に語り継ぐことが必要だ、という本作製作陣の言葉が重く響く。

(文中一部敬称略)

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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