香川県の「ゲーム規制」は正しいと言えるのか 「アイテム課金」とゲームを履き違えている

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そもそも依存症は結果であって、予防することは難しいと考えます。WHOのゲーム障害(依存症)についても、先の定義を読んでもらえればわかると思いますが、生活に支障がでるほどゲームに傾倒してしまう人がいて、そういう人は適切な対処が必要であると言っているだけです。

WHOが発表した国際疾病分類にあるゲーム障害の次の項目には、そのほかの障害というものがあり、すべてが対象であることがわかります。なので、ゲームがほかの娯楽に比べて、依存症になりやすいとは言っているわけではありません。

依存症自体は、ゲームに限らず多くの事柄でみられます。知名度の高いものでいえば、アルコール依存症、ギャンブル依存症などがあります。タイガー・ウッズが発症したことで、セックス依存症も耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。

ほかにも本ばかり読んで人とコミュニケーションをとれない人や特定のスポーツチームやアイドルを応援するあまり、社会生活がまともに送れなくなっている人もいます。恋愛に関しては友人関係や家族関係を壊しても恋愛対象との関係を優先したり、社会的に制裁されたとしても不倫をする人が後を絶たないことをみても依存が存在することが十分わかります。

しっかりとした議論と検証方法が必要

これらの事象で依存症と判断された人も基本的には依存症を改善するための対処をするものであって、依存症自体をなくすために依存したものそのものを禁止することは行っていません。薬物依存症のように効果が大きく、社会復帰が難しいもの自体は法律で規制されていますが、ほとんどのものは規制されているわけではありません。

ゲーム依存症がないとは思っていませんし、ゲームをプレーすることを優先して社会生活がまともに送れない人もいると思います。だからといって、ゲームそのものを規制すると、後々ほかの影響が出てくると思うのです。

ゲーム依存症が話題になる前は、ギャンブル依存症が取り沙汰されていました。その結果、パチンコ業界がかなりシュリンクされました。ゲームも同様に市場が縮小していった後は、次の嗜好品がターゲットになることは目に見えています。

それはアニメかもしれませんし、ネット動画かもしれません。自分に興味がないものだからと言って、野放しにしていると、いつかは自分の好きなものが対象になってしまうでしょう。そうなる前にゲーム=悪、無駄なモノと一蹴せず、しっかりとした議論と検証方法が必要だと思います。

現時点では、香川県のネット・ゲーム依存症に関する条例の素案は、子どもたちを依存症から守ることを名分に、自分たちが興味のないゲームの規制をしたいようにしかみえません。ゲームを規制するために子どもをだしに使うのは、本末転倒どころではないことをよく考えてみたほうがよいのではないでしょうか。

岡安 学 デジタルライター

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おかやす まなぶ / Manabu Okayasu

eスポーツを精力的に取材するフリーライター。ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。さまざまなゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、関わった書籍数は50冊以上。現在は、ウェブや雑誌、ムックなどで活動中。近著に『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム刊)、『INGRESSを一生遊ぶ!』(宝島社刊)。@digiyas

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