ゴーンが自白の強要と感じた検察の「説得」 弁護士が指摘するゴーン氏取り調べの問題点
――実際に立ち会ってどうでしたか?
「取調室ではアマチュアのボクサーとプロボクサーが殴り合っているようなもの」と村木厚子さんが言ったというのは有名な話だが、弁護士が横にいても警察は被疑者を怒鳴る。「『そうじゃない』と昨日言っていたじゃないか!」と。警察に「怒鳴らないでください」と言うと、警察は「怒鳴っていません」と反論する。
「弁護士は発言しないように」と言われて同席を認めるという話だったが、私は「嫌だ」と言って、口を挟み続けた。(任意の取調べであり)逮捕されていたわけではないので、打ち切って帰ることもできただろうが、帰らずにいたら、結局、4時間かかった。普通の人なら、弁護士が立ち会っていなければとても耐えられないだろうと思った。
検察にとっての説得、被疑者にとっての強要
――ゴーン氏は「自白を強要された」とレバノンでの会見(1月8日)で述べました。東京地検の斎藤次席検事はその会見翌日、「自白を強要したことはない。録音・録画を見てもらえばわかる」と定例会見で言っています。どちらの言い分が正しいのでしょうか。
「自白を強要された」とゴーン氏が受け止めても仕方のないような言動はあったに違いない。
検察にとっての「強要」と被疑者が受け止める「強要」のイメージは違う。「認めないと不利だ」「いつまでも否認を続けて頑張っても確たる証拠がある」と言われたら、被疑者にとっては「自白の強要」だ。が、検察にとっては「自白の強要」ではなくそれは「説得」である。
――「罪を認めたら釈放する」という言い方はどうですか?
検察には釈放する権利があるわけだから、利益誘導に当たり、違法だ。ただ、「罪を認めたら日本では保釈されやすいというのは事実だ」という言い方ならどうだろうか。
――「保釈されやすい」という言い方は傾向を説明しているかのように聞こえますね。
検察はそう言うのだ。しかし目の前にいる検察には釈放する権利があることと合わせて考えると、「自白すれば保釈が円滑に行く」というサインだと(被疑者は)受け止める。
ゴーン氏が後で弁護士に「こういう話があったが事実か」と聞けば「残念ながらそれは事実だ。あなたが否認をしていると、あなたの保釈に検察は絶対反対する。そうすると裁判所も大半は保釈の判断をしない」と言うだろう。すると、(保釈による)自由と引き換えに自白を強要されたようなものだとゴーン氏が思うのも無理はない。
私が取り調べに立ち会っていて、ゴーン氏の横にいたらその時点でクレームを入れる。検察に「何を言っているの! それは自白の強要だ!」と注意する。その場で「罪を認めなくても保釈された事例はいくらでもある」とゴーンさんに説明する。私は「この検察官はクビにしろ」と言うだろう。
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