1998年に伝染病予防法等を統合する形で感染症法(「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」)が制定されたが、2009年に新型インフルエンザが世界的に流行した際に十分な対応ができなかった。2012年には「新型インフルエンザ等対策特別措置法」が制定されているが、これで十分なのかは疑問だ。いざとなったら「超法規的措置」で対応すればよいという考えもあるようだが、法律のみならず緊急事態に対応するための組織や体制も日本には欠けている。
長期的には市場で民間の自由な取引が行われることによって、人々の欲しい物やサービスが効率的に供給される。政府による資源配分への直接的な介入は、公害のように経済活動に伴って外部不経済が発生する場合や、教育のように支出を行う本人以外にもプラスの効果がもたらされる外部経済のある場合など限定的にするべきだとされている。
しかし、感染症の大規模流行のような危機への対応においては、情報の不足や供給のボトルネックがあちこちで発生する。市場が有効に機能する条件は失われてしまい、トップダウンの供給対策や需給調整が不可欠になると考えられる。
阪神淡路大震災や東日本大震災震災では、コンビニなど民間の供給システムが活躍したことが報道されているが、セブン-イレブンは「当日、東北地区の店舗のうち65%の店舗が休業」「震災から約3週間後には90%の店舗が営業を再開しました」としている(セブン-イレブン・ジャパンのホームページ「東日本大震災の復興支援」)。
少なくとも震災後かなりの期間は、多くの人たちが地元自治体が手配した生活物資に依存していたはずだ。東日本大震災や阪神淡路大震災などでは、行政や企業の本社機能が集中している東京は大きな被害を受けなかった。しかし、大規模な感染が起これば東京の機能も著しく低下してしまう恐れが大きい。その時どう対応するのか、行政も準備が必要であろうし、企業や個人もそれぞれ備えをしておくべきだろう。
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