急速に広がる「怒り」の感情
これら、力士とプロ野球選手のネット上での発言は、本人たちからすれば、ちょっとした軽口や、真情の吐露でもあったのだろう。
しかし、話し言葉に比べて活字からは真意が伝わりにくく、メディアへの露出の多い有名人からの発信とて行間を埋めきれない。
SNSへの書き込みには、躊躇や遠慮がなかったり、文章の推敲を割愛しているものも散見する。
サンディエゴの精神科医デービッド・リース氏は、「走り書きして送信ボタンを押すのはとても簡単だ。深く考えることなく衝動的に発言できる。昔であれば、怒りにまかせて手紙を書いても封筒に入れるまでには冷静になれた。しかしツイッターではその必要がない」と解説している。
さらに、インターネット上では、人と直接会話するときよりも「怒り」の感情が一気に伝染する特徴がある。
中国の北京航空航天大学の研究チームの調査で、中国のツイッターと呼ばれる「新浪微博(ウェイボー)」の投稿内容を、悲しみ、嫌悪、喜び、怒りの4つの感情に分類してそれぞれの影響力を調べたところ、悲しみと嫌悪はほとんど広がりを見せず、最も広く、急速に広がるのは怒りの感情だったことがわかった。
人から人へ感情が連鎖することを「情動伝染」という。
例えば、職場内に一人イライラしている人がいると、周囲にどんどんイライラが広がっていくような感覚だ。
他人の怒りを受けて、自分がイライラしてしまい、その怒りをさらに誰かに伝染してしまうことはネット上でもあり得るし、スピードも速い。
しかも、発言者の真意も諮られないまま、受け手側の怒りに、受け手側の曲解なども加わったネガティブな感情がうねりのように大きくなっていくのだ。
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