大攻勢の日本電産、定まらぬ「ポスト永守」 電気自動車向けモーターで5000億円投資

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ところが、その2週間後に開かれた前述の緊急記者会見では永守会長自身が出席。その後も「私の経営学を学ぶには最低でも数年必要」と吉本氏を繰り返しかばうが、2019年10月に買収を決めたオムロンの車載事業買収など、社の将来を占う重大な決定はすべて永守氏の決断で行われているのが現状だ。

関氏が日産を離れた理由は「社長になれなかったから」とされている。では日本電産で期待されている役割は何なのだろうか。23日の説明会で永守氏が後継者問題の代わりに説明したのが、EV向けトラクションモーター(駆動用モーター)の立ち上がりだ。今後の事業拡大に欠かせないとみているこの分野で関氏の活躍は不可欠だという。

これからの大増産は関氏が指揮する

永守氏は、トラクションモーターの2025年までの受注積み上げが1000万台を超えたと強調。部品から組み立てまでの一貫生産を行うために5000億円の投資が必要だと語った。今回の通期予想の引き下げ要因もトラクションモーターにかかわる追加投資だとし、攻めの姿勢は鮮明だ。「これからの心配は、数量をしっかり作っていけるかだ」と語る。

関氏についても「これからの大増産は彼が指揮する」と語り、競争力ある生産体制を作るうえで、関氏への期待を示した。関氏は日産で生産分野の担当が長く、技術にも精通している。また、日産で中国事業を担ったことがあり、トラクションモーターの主要市場となる中国における関氏の手腕に期待しているようだ。

「今後きちんと発表する」(永守氏)予定の関氏の処遇だが、トラクションモーターでの成否次第で後継者とするのか。そのゆくえは永守氏の意向にかかっている。

高橋 玲央 東洋経済 記者

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たかはし れお / Reo Takahashi

名古屋市出身、新聞社勤務を経て2018年10月に東洋経済新報社入社。証券など金融業界を担当。半導体、電子部品、重工業などにも興味。

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劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

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