奨学金に「苦しむ人・苦しまない人」の圧倒的差 悪い例だけを鵜呑みにしてはいけない
──ほお……。
奨学金の利用者も、昔と比べてかなり増えています。奨学金の代表は「日本学生支援機構」、かつての「日本育英会」ですが、日本学生支援機構の奨学金、中でも返済義務のある「貸与型」の利用者は、大学生の2.7人に1人(2017年時点)という高い割合です。2004年度には4.3人に1人ですから、その増え方がわかりますよね。
──大学生の半分近くは活用していることになりますね。
背景には、大学の授業料が高くなっていることもあります。
──え、そうなんですか。
一例ですが、1987年時点での年間授業料の平均は、国立大学で30万円、私立大学で51万7395円でした。2017年は、国立大学が53万5800円、私立大学が90万93円になっています。この傾向は近年も続いているんですよ。
奨学金で夢を叶えた例のほうがたくさんある
──厳しい現実ですね。子どもに「お金がないからその大学諦めて」とも言えないし。
その意味では、奨学金は必要な制度ですよね。しかも、今年から返済不要の給付型奨学金が大幅に拡充されるなど、よりメリットは増えます。奨学金の仕組みを正確に知り、親子できちんと進路を考えることが第1です。保護者の方と話していると、奨学金の「よい例」のほうがずっと多いと感じています。
──「よい例」ってどんなものですか?
ある沖縄の離島出身の子は、決して世帯収入が高くない。しかし彼女は大学に行き、本気でジャーナリズムを勉強したかったんです。ただ、大学で学ぶには島はおろか、沖縄からも出る必要があった。その子は奨学金を利用し、関東の大学に進学しました。
さらに、少しでも費用を減らすため夜間部を選択。本気で学びたいからこその選択ですし、その思いを実現するために奨学金は役立ったはずです。
──いい話……。
ほかにも、ある女の子はお姉さんが障がいを持っていて、小さい頃から福祉の勉強をしたいと思っていました。福祉の現場で働くというより、いつかよりよい福祉制度に変えていきたいと。その目標を実現するために、奨学金を借りて関東の国立大学に入ったんです。よい例はたくさんあるんですね。
──確かに、悪い例だけ鵜呑みにするのはよくないかも。
そうですね。きちんと親子でコミュニケーションをとって、将来を考えたうえで利用すればきっと役立ちます。さらに、奨学金の特性を知って賢く借りるのが大切です。
──賢く借りる……ぜひ教えてください!
わかりました。では、細かな制度や利用のテクニックについては、次回お話ししましょうか。奨学金のほかに「教育ローン」もあるので、その違いも説明しましょう!
──よろしくお願いします!
(有井太郎=取材・文 小島マサヒロ=撮影)
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