認知症介護で崩壊寸前の家族を救ったきっかけ

介護にマニュアルなし!介護から「快護」へ

本来ならつらいはずの介護を「快護」と言い切る小田尚代さんに、その理由を尋ねた(写真:byryo/iStock)
介護のイメージといえば、一般的に「きつい」「大変」。介護業界では人材不足に悩まされているなど、事態は深刻だ。ノンフィクション作家の奥野修司氏は、これまで多くの認知症当事者や家族を取材することで、認知症のリアルな実情、そして問題点を見つめてきた。介護をめぐって、家族が不幸になる事例もあったという。
そんな中、本来ならつらいはずの介護を「快護」に変えて、崩壊寸前だった家族を救った女性がいた。この女性の考え方や姿勢は、家族の介護に悩む多くの人たちのヒントになるかもしれない。もちろん、介護をする家族にはそれぞれの事情があり、この家族の例が当てはまらない人もいると思うので、あくまで1つの事例として捉えていただきたい。奥野氏の新著『なぜか笑顔になれる認知症介護』より抜粋して紹介する。

必ずしも頼りにならなかった介護施設

2017年に京都ADI(国際アルツハイマー病協会)国際会議で、認知症の人を介護する家族を代表して演壇に立った女性がいた。京都府在住の小田尚代さん(60)だ。わずか15分ほどの発表だったが、彼女の口から出た「介護より“快護”」という言葉がずっと印象に残っていた。介護にはどこか、暗い、辛い、汚いというイメージがある。それを「快護」と言い切る彼女にぜひ会ってみたいと思って京都に向かった。

小田さんの夫・修一さん(68)がアルツハイマー型認知症と診断されたのは2007年。同じ内容の電話を何度もするのに覚えていないというので、おかしいと思って病院で検査をしてわかった、のだが……。

診断されるとすぐに休職を命じられ、半年後には退職させられたのである。診断の翌年には感情のコントロールが難しくなり、2年ほどもすると、言葉が出なくなってきた。

機嫌のいいときはアイロンかけもしれくれるのに、自分の言いたいことを伝えられない歯がゆさ、もどかしさからか、なんでもないことに大声で怒鳴ったり、家具や台所を拳で叩きつけたりした。修一さんの混乱を受け止められない家族は、ただ怖くて一目散に逃げるしかなかったという。

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