孤独死した40代男の部屋に見た20年に及ぶ孤立 「ひきこもり」経て親も亡くなり悲劇は起きた

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ひきこもりの元当事者として感じるのは、決して現状でいいと思っているわけではないということだ。自分は、このままでいいのか、これから自分はどうなってしまうのか、未来を憂いて焦りばかり募る。なんでこんなことになってしまったのかという、怒りや悲しみ、どうしようもない焦燥感に襲われる。

社会に置いていかれていると感じる日々は、生きながらにして死んでいるような地獄である。そんな孤立した生活は、ますますセルフネグレクトを深めて、不摂生な生活へ向かい、知らず知らずのうちに自らを追い込んでいく。

いつか、叔母からの仕送りが止まるかもしれない、そのとき自分はどうなってしまうのだろう――。そんな不安が、高橋さんの頭の片隅にあったのではないだろうか。

40~64歳のひきこもりは全国に61.3万人

内閣府は2019年4月に初めて、自宅に半年以上閉じこもっている「広義のひきこもり」の40~64歳が、全国で推計61万3000人いるとの調査結果を出した。

今後政府が抜本的な対策を打たない限り、8050問題に代表されるように、長期化する中高年のひきこもりが親亡き後にたどる運命は、孤独死や餓死といった最期を迎えるケースも、増えるだろう。

日本少額短期保険協会が発表した第4回孤独死現状レポートによると、孤独死の平均年齢は、61歳で、高齢者に満たない年齢での孤独死の割合は5割を超え、 60歳未満の現役世代は男女ともに、およそ4割を占めるという。これだけ若くして孤独死してしまう人が多いということだ。

もちろん、孤独死の内訳がひきこもりだけとは限らない。しかし、その内訳はかなりの数が含まれており、年々増えているとの実感がある。孤独死の取材者として、そして、何よりも元ひきこもりの当事者として、「命」に関わることとして、この現状に危機感を感じずにはいられない。

政府が重い腰を上げたことで、ようやく中高年のひきこもりの実態が昨年明らかになった。それならば、その最終地点である孤独死の実態把握とその対策も、急いで取り組むべき喫緊の課題といえるだろう。

菅野 久美子 ノンフィクション作家

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かんの・くみこ / Kumiko Kanno

1982年、宮崎県生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。出版社で編集者を経て、2005年よりフリーライターに。単著に『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』(彩図社)、『孤独死大国』(双葉社)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(KADOKAWA)『母を捨てる』(プレジデント社)など。

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