アベノミクス後、政府は景気判断基準を変えた AIが示す現状は「景気は厳しさを増している」

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安倍政権以降、政府の景気判断の基準が変わった?写真は昨年末の報道写真展にて(撮影:尾形文繁)

1月10日に発表された11月の「景気動向指数」のCI一致指数は前月比マイナス0.2ポイントで、2013年2月以来の低水準となり、基調判断は2019年8月以降「悪化」が続いている。

一方で、政府が月例経済報告で示している景気の基調判断(19年12月分)は「景気は、輸出が引き続き弱含むなかで、製造業を中心に弱さが一段と増しているものの、緩やかに回復している」と、結論の部分は「緩やかに回復している」を維持しており、明らかにベクトルが異なる。政府による強気の基調判断を額面どおりに受け入れていると景気後退入りのタイミングを見誤る可能性がある。

月例経済報告は景気に対する政府の公式見解を示す資料であり、「月例経済報告等に関する関係閣僚会議」において経済財政政策担当大臣を中心に議論されて内容が決まる。景気動向指数も参考にされるものの、CI一致指数などによって機械的に基調判断が決定するわけではない。したがって、政府の基調判断はどのような基準で作成されているのか不透明な点が多い。基調判断にはなんらかの「クセ」があることも想定される。

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そこで、今回は経済指標のデータから月例経済報告の基調判断を予想するAI・機械学習モデルを作成し、その特徴を分析した。

その結果、アベノミクスが始まった2013年1月以降は基調判断が強気な表現に維持されている可能性が高く、アベノミクス前の基準であれば、2019年12月の基調判断は「一層厳しさを増している」であった可能性が高いことが分かった。

月例経済報告・基調判断のAIモデルで検証

CI一致指数に含まれる個別系列(9系列)の過去データを学習データとして、月例経済報告の基調判断文章を予測するAI・機械学習モデルを作成した。

具体的には、X月の基調判断に対し、(X-1)月までの経済指標をnヵ月分用意し、1つの学習データとする。このようなデータを月例経済報告の基調判断が取得できる1998年1月から直近の2019年12月についてAI・機械学習モデルに学習させた 。

今回用いたモデルは機械学習に一般的なカテゴリー分類ではなく、あるデータセット(経済データ)から他のデータセット(文章データ)を生成するという「seq2seq」のモデルである。「seq2seq」は機械翻訳の分野(文章データ⇒文章データの生成)で用いられる技術として知られている 。このようなモデルの正確性(精度)は、「正解or不正解」といった正答率では測ることができないため、BLEU(Bilingual Evaluation Understudy)という指標を用いるのが一般的であり、今回もこれを基準とした。

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