「ドコモ2カ月ぶり純増首位」のカラクリ 伸びているのは格安SIMカード

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ドコモ契約が伸びている理由は、MVNO業者による格安のSIMカードが伸びているから

MVNOのサービスは、データ通信量が少ない、音声通話ができない(日本通信など一部を除く)といった制限もあるが、月額1000円以下で利用できるプランが中心だ。かつてSIMカードは、先進的なネットユーザー向けの限られたサービスだったが、今ではスマホの料金を安く抑えたいというニーズの高まりとともに、着実に裾野を広げてきた。

3月末に向けては、「消費増税を前に通信料金を節約したい」とのニーズも高まっているようだ。「一般紙だけでなく、地方紙からも節約をテーマにした取材が増えた。販売動向をみても、想定していた以上に市場が拡大している」(業界幹部)。

だがMVNOの場合、前述のように毎月の支払い額は1000円以下。月々5000~6000円を支払うドコモのスマホユーザーと比べて、収益への貢献度合いは比べ物にならない。契約数が増えても、ドコモは素直に喜べないのだ。

スマホを自力で伸ばせるか

業績改善につなげるためには、ドコモの契約によるスマホユーザーを自力で獲得する必要がある。とはいえ、足元の競争環境は激烈だ。携帯3社がアイフォーンを扱う初めての年末商戦ということもあり、各社は強力な販売キャンペーンを展開している。販売店関係者からは「発売5カ月のアイフォーン5sがすでに0円で販売されている。他社から乗り換えるユーザーに7万~8万円ものキャッシュバックも付くなど、これまでにない激しい競争だ」との声も聞かれる。

純増数1位が定位置だったソフトバンクが2位に転落したことで、3月は巻き返しが予想される。KDDIも「来期以降の収益につなげるため、費用をかけてユーザーを獲得する」(同社幹部)などとキャッシュバック強化を公言している。ドコモにとっては、厳しい戦いが続くのは間違いなさそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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