年金は、本当に「100年安心」なのか

【新連載】5年に1度の「年金の大イベント」が始まった

全要素生産性上昇率を高く設定すれば、労働力や企業の機械設備があまり投じられなくても、自ずと高い経済成長率が実現できると予想してしまう。経済成長率が高いと予想すると、年金積立金運用利回りも相対的に高くなると予想され、年金保険料を抑えても年金給付を多く出せるという予想を示すことになる。

また、労働分配率を高く設定すれば、企業が上げた付加価値を賃金により多く分配することから、賃金が多くなる分年金保険料率を上げなくとも年金保険料収入が多く入ってくると予想してしまう。まさに、これらをどう置くかが、年金財政の収支見通しを左右するのである。

経済前提を楽観的にせざるを得なかった専門委員会

今回示された経済前提はどうだったか。結論から言えば、経済前提は楽観的なものにせざるを得なかった、といえよう。これは、厚生労働省が年金の実態を隠そうとしたわけではなく、内閣の経済運営の方針がそうだったからというべきである。

5年に1度の年金の財政検証では、前回の2009年のときもそうだったが、厚生労働省が完全独自に経済成長率などの経済指標を試算するのではなく、内閣府の試算や前提を踏襲する形で行われる。今回もそうである。したがって、内閣府の試算や前提が鍵となる。

では、内閣府の試算や前提はどうか。それは、今年1月に示された「中長期の経済財政に関する試算」(略して中長期試算)である。これは、2023年までの10年間の経済財政の試算を示している。

ただ、安倍内閣は、デフレ脱却・経済再生を掲げており、インフレ目標で掲げた2%の物価上昇や成長戦略による経済成長率引上げを目指している。内閣府の試算で、さすがにそれを否定する結果を示せるはずもなく、前掲の「中長期試算」では、「経済再生ケース」として予測を示している。「経済再生ケース」では、2013~2022年度の平均で名目成長率3.4%、実質成長率2.1%との結果を示している。

次ページ「ケースA」というバブル期並みの経済前提とは?
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