遺品整理のプロが見た悪質業者が跋扈する実態 現金や美術品などのお宝も掘り出されるが…

拡大
縮小

トラブルを避ける方法としては、インターネットで申し込んで終わりではなく、業者に電話をして対応を見ること。見積書の明細などを発行してもらうなど、とにかく細部の確認を怠らないことが重要だと屋宜氏は指摘する。

遺品整理の未来

遺品整理業界の最大の問題は、まだ比較的新しい業界のため、明確なガイドラインや法整備、監督官庁が決定していないことだろう。少しずつ悪徳業者の淘汰は進んでいるが、サービスの向上には至っていないと屋宜さんは指摘する。

「わかりやすい比較が引越し業者ですね。彼らは決められた納期と料金で競合している。しっかりと制服に身を包み、少人数でプロの仕事を提供する。ところが遺品整理の現場では、私服で短パンのようないでたちの男性が10人くらいで押しかけて作業するというようなこともある。また、納期も1日のはずが、1週間かかったという話もよく聞きます。プロ意識の低さを変えていかないと、業界の発展はないと思いますし、今がその転換期です」

取材の最後に、屋宜さんは嘆きにも似た口調でこう締めくくった。

「高齢化が加速していく日本では、遺品整理の仕事は必ず需要が増え、社会的にも必要な仕事です。一部の悪徳な業者の存在により不信感が消費者に浸透しつつある。業界が正常化するにも、最低5年ほどの歳月が必要です。だからこそ今の段階で手を打たないと、この業界が無くなってしまう危機感も持っているんです」

過度期を迎え、悪徳業者の淘汰は今後進んでいくだろう。その一方、利用者側が正しい知識を持ち対応策を把握することは、安楽な終活へとつながる最善策でもあることを覚えておきたい。

栗田 シメイ ノンフィクションライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

くりた しめい / Shimei Kurita

1987年生まれ。広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』。『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。連絡はkurioka0829@gmail.comまで。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT