オムロンが最新「卓球ロボ」に込めた本当の想い CESで初披露、ロボットと人は共存できるのか

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血圧計や体温計などヘルスケア事業で知られるオムロンだが、主力はセンサーやコントローラーなどの制御機器事業で、売上高の46%を占める(2019年3月期)。

オムロンは約20万点の制御機器を製造しており、フォルフェウスは特殊な機器ではなく、コントローラーや産業用カメラなど、市販の機器を組み合わせて作られている。とくに、卓球ロボットを精度高くコントロールしているのは、オムロンの強みであるセンシングや制御の技術だ。フォルフェウスで作り上げた技術を、他部門へフィードバックすることも検討する。

ロボットと人はどう共存するのか

オムロンはここ数年、制御機器などを単品売りするのではなく、ソフトウェアと組み合わせた生産ラインを開発してきた。例えば、作業者の動きをみて習熟度を判定し、初心者に作業のアドバイスを行ったり、作業ミスをその場で指摘するなど、生産性向上をサポートする技術だ。

2019年12月に開催された「国際ロボット展」にオムロンが展示した生産ライン。作業者の前に設置されたディスプレイに作業内容が表示されている(記者撮影)

2019年からはソフトウェアに加えて、ロボットを組み込んだ生産ラインを開発している。オムロンのロボット事業は2015年にアメリカの産業用ロボットメーカー「アデプト テクノロジー」買収時からで、歴史はまだ浅い。オムロン・インダストリアルオートメーションビジネスカンパニーロボット推進プロジェクトの山西基裕本部長は「未来のものづくりを考えるとロボットは不可欠。ロボットを手に入れれば、制御機器のアセット(資産)と組み合わせることでユニークな存在になれる」と話す。

しかし、ロボットを組み込んだ生産ラインは現状、「人の空気を読んで工場内で人とロボットが一緒に働くという、本当の意味での協働の段階までは至っていない」(大手産業用ロボットメーカー幹部)。工場にロボットを導入することで人間(作業者)を不要にするのではなく、オムロンは逆に作業者の能力を積極的に引き出すようなロボットの開発を狙っている。

その意味で、「ロボットメーカーが、学習理論などで異業種とどのように連携していくかが今後重要になる」(大手産業用ロボットメーカー幹部)とみられており、今回のオムロンとスクウェア・エニックスの共同研究は異業種連携の1つの典型例となる。オムロンは人と機械が共存する未来像を示せるのだろうか。

田中 理瑛 東洋経済 記者

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たなか りえ / Rie Tanaka

北海道生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。報道部、『会社四季報』編集部を経て、現在は会社四季報オンライン編集部。食品業界を担当。以前の担当は工作機械・産業用ロボット、ドローン、医療機器など。趣味は東洋武術。

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