トヨタが静岡に創る「未来型都市」に映る危機感

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豊田社長は2年前CES2018のプレスカンファレンスにも登壇。そのとき、このような危機感から、「私はトヨタを、クルマ会社を超え、人々のさまざまな移動を助ける会社、モビリティ・カンパニーへと変革することを決意しました」と宣言しています。

大胆なビジョンを提示する

トヨタは、上記CES2018において、モビリティサービス専用の次世代電気自動車(EV)事業を推進する「eパレット」コンセプトを発表しています。しかし、次世代自動車産業での中国・アメリカの動きと比較して、どうしても出遅れた状況にあることは明白でした。それに対して、今回のCES2020で発表された実証都市「コネクティッド・シティ」プロジェクト、『Woven City』は、次の二つの点からも非常に高く評価されるものであると考えられます。

トヨタの自動運転バスの「e-Palette(イーパレット)」もWoven City内を走る計画だ(筆者撮影)

第一に、「コネクティッド・シティ」、エコシステムという極めて「大胆なビジョン」を提示したことです。くわえて、着工が2021年初頭というスピード感があります。従来の日本企業であれば、少なくとも3年、あるいは5年・10年というスパンでの計画となるのではないでしょうか。豊田社長の危機感から来る相当なスピード感でプロジェクトに対峙している様を見て取ることができます。

第二に、「コネクティッド・シティ」の拡張性です。「コネクティッド・シティ」プロジェクトは、現時点では静岡県裾野市の『Woven City』建設までの発表となっています。しかし、法制度などハードルがクリアになれば、富士山のふもとを起点にしつつ日本全国、さらにはグローバルに「コネクティッド」化、スマートシティを推進するというトヨタの使命感も伝わってきます。「大胆なビジョン」を提示することは、自らの事業を通じて「どのような社会的課題と対峙するのか」「どのような新たな価値を社会へ提供するのか」という観点から事業を構築していくということでもあります。

旧来の日本企業であればエコシステムを構築するという大胆なビジョンを提示することは困難と思われるかもしれませんが、日本を代表する企業のトヨタ自らが大胆にも先導し、日本の活路を示していく。筆者は、「コネクティッド・シティ」プロジェクトからそのようなトヨタの覚悟を感じ取りました。

次世代自動車産業は「クルマ×IT×電機・電子」が融合する巨大な産業です。そこにはクリーンエネルギーのエコシステムとして電力・エネルギーが加わります。半導体消費が大きいことに加え通信消費が大きいのも次世代自動車の特徴。クルマがIoT機器の一部になる近未来には、通信量は膨大なものになるはずです。これらが交差してくると「東京電力のような電力会社やNTTドコモのような通信会社がクルマを売る」「トヨタのような自動車会社が電力や通信を提供する」などといったことも現実になってくるかもしれません。

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