南米の最貧国ガイアナが2020年に大化けする 巨大原油開発でIMFが前年比86%の成長予測

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ガイアナが将来、「資源の呪い」を回避することができるかどうかは最大の課題だろう。「資源の呪い」は政治面と経済面の両面に及ぶ。

政治面では、他の途上国で散見されたように、汚職問題が懸念される。トランスペアレンシー・インターナショナル(国際透明性機構)の2018年度腐敗認識指数でガイアナは180か国中93位だ。原油生産開始とともに汚職問題が悪化する可能性も指摘されている。また司法の独立性をはじめ政府組織の脆弱性について早期改善は見込めず、政情不安に陥るリスクが潜む。一方、経済面では原油産業に投資が集中し、通貨の上昇などによって他の産業が衰退するといった、いわゆるオランダ病にかかるリスクも想定される。

今後、ガイアナが原油生産によって、カタールなどのように国が潤い発展するのか、あるいはガーナなどのようにオランダ病で苦しむこととなるのか、注目される。大統領選を制する政党の政権運営次第で、同国経済の将来は左右されるだろう。2020年は重要な岐路に立っているといえる。

オランダ病を防ぐためには、政府に医療、教育、インフラ、治安対策などを通じて資源再配分の政策が求められる。ガイアナはすでにノルウェーなどを参考に政府系ファンド(SWF)を設立し、原油歳入を管理する方針だ。世界銀行やIMFをはじめ国際機関が、ガイアナ政府に助言を行っていることなどは安心材料だ。

ベネズエラとの国境紛争も抱えている

ガイアナは国境問題でベネズエラと対立している。陸上ではエセキボ川の西側、ガイアナの約3分の2に相当する地域を、ベネズエラは自国領土であると主張。洋上でも境界線で考えに相違がある。あるガイアナ専門家によると在米ベネズエラ大使館に掲げてある世界地図では、エセキボ川まで自国領土として描かれているという。

ベネズエラはいまだに与党マドゥロ政権と野党のグアイド暫定政権で対立が続いているが、両者を唯一団結させるのがガイアナとの国境問題という。同問題をスケープゴートとしてマドゥロ政権が利用するリスクは常に存在する。ただ、ポイントは、エクソンモービルのコンソーシアムに中国企業のCNOOCが入っていることで、マドゥロ政権は自らの存続にとって極めて重要な中国との関係悪化を招くことは避けるとみられ、武力行使のリスクは低い。

以上のように、ガイアナの発展にはリスクも多く、とりわけ、長年の根強い人種間の対立の行方は注視すべき点だ。だが、少なくとも、2020年に小国ガイアナが驚異的な急成長を遂げ、名前が世界に知れ渡ることは確実だ。

渡辺 亮司 米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長

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わたなべ りょうじ / Ryoji Watanabe

慶応義塾大学(総合政策学部)卒業。ハーバード大学ケネディ行政大学院(行政学修士)修了。同大学院卒業時にLucius N. Littauerフェロー賞受賞。松下電器産業(現パナソニック)CIS中近東アフリカ本部、日本貿易振興機構(JETRO)海外調査部、政治リスク調査会社ユーラシア・グループを経て、2013年より米州住友商事会社。2020年より同社ワシントン事務所調査部長。研究・専門分野はアメリカおよび中南米諸国の政治経済情勢、通商政策など。産業動向も調査。著書に『米国通商政策リスクと対米投資・貿易』(共著、文眞堂)。

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