そうは言っても、何をどうやって伝えたらいいのかわからない。そんな声を多く聞きます。その原因の1つは、診察のはじめに聞かれるお決まりの質問、「今日はどうされましたか?」にあると思います。
「はい、いいえ」や「AかBか」で答えられない、この答えの幅が広い質問はOpen Questionと呼ばれます。患者が話したいことを自由に話せるように、という趣旨の質問ですが、何を話せばいいのか、かえって混乱してしまうのです。
そんなときは、今自分が一番困っている症状を話しましょう。そのまま自分が話し続けるか、医師から質問が来るかはその状況次第ですが、ここで診察の流れを知っておくとスムーズです。
医学生は診察のトレーニングをする際、症状を聞く基本的な流れをOPQRSTという語呂合わせで覚えます。
O(Onset)はいつから症状が出たのか、P(palliative/provocative)は症状がよくなる(悪くなる)行動、Q(quality/quantity)は症状の様子、R(region/radiation)は症状の場所、S(associated symptom)はその他の症状、T(time course)は時間の経過です。
頭痛を例にしますと、「2週間前から痛い・眠ると頭痛がおさまる・ズキズキ痛む・頭の後ろが痛い・発熱と鼻水もでる・これらが2週間続いている」といった具合です。経過についてはなるべく時系列に沿って伝えるといいでしょう。このように、症状を伝えるときには、一番困っている(気になる)症状を主にして伝えるようにしましょう。
すべての医師がこれに沿うとは限りませんが、少なくとも自分から症状を伝える際は参考になるかと思います。情報の過不足は医師が決めることで、もし足りなくても追加で質問されるので問題ありません。
多くの症状を伝えることに遠慮してしまう
とはいえ、熱もある、鼻水も出る、腰もちょっと痛いかも……と次々に症状が浮かんでくると、こんなに多く情報を伝えるとかえって医師を混乱させてしまうのでは?と思ってしまう方もいらっしゃいます。その結果、「よく考えると、たいしたことないかも」と自分で勝手に決めつけてしまい、本来重要であるかもしれない症状を伝えずに診察を終えてしまうのです。「聞かれなかったからそれ(症状)は言わなかった」という話もよく聞きます。
しかしながら、先程も申し上げましたように、情報を集めて過不足があるか、重要かどうか判断するのは医師です。いくら診察に慣れた医師でも、顔を見た瞬間に相手の生活状況や隠れた症状、病気の名前がわかるわけではありません。幾つかのキーワードを繋ぎ合わせて、知識と経験則から診断するのです。
少しでも気になることがあれば遠慮せず伝えましょう。もしかしたらそれが、診断につながる重要なキーワードになるかもしれません。
対策をまとめると、必要ならばあらかじめメモを作っておき、自分がいま一番困っていることから時系列に沿って詳しく話すこと。その際に、一番気になることを主軸に伝えること。どんなに小さなことでも、気になることは医師に伝えること。
診察は、医師と患者のコミュニケーションです。医師が患者に話しやすいと思われるよう努力するように、患者側からも医師へ歩み寄る姿勢が医師との信頼関係を築きます。これらを1つでも心に留めておくことで円滑な診察を受けられると思いますので、ぜひ実践してみてください。
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