ジャズに最適?「日本一小さい新幹線駅」活用法 "コンサートホール並みの音響"に感動の声も

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コンサートの合間に、改札口の外でもう1つ、節目となる光景を目にすることができた。津軽鉄道の終点・津軽中里駅(中泊町)と奥津軽いまべつ駅を結ぶ連絡バス「あらま号」がリニューアルされた姿だ。 愛称は今別町の郷土芸能で青森県無形民俗文化財の「荒馬(あらま)」にちなむ。

津軽中里駅と奥津軽いまべつ駅を結ぶ「あらま号」=2019年12月(筆者撮影)

「奥津軽」はもともと、津軽平野から日本海岸にかけての五所川原市と西津軽郡、北津軽郡を指す地域名だ。1980年代の終わり、弘前市のイメージが強い「津軽」と別の地域ブランドをつくろうと五所川原青年会議所が提唱した。当時は「なぜ、わざわざ“奥地”というイメージを打ち出すのか」と異論もわき上がったが、30年ほどの間にすっかり定着した。

奥津軽いまべつ駅がある今別町は、津軽海峡に面し、東津軽郡、地元では「上磯地方」と呼ばれる地域に属する。本来なら「奥津軽」のエリア外だ。とはいえ、北海道とのつながりでみれば、駅は「奥津軽」への玄関口に当たる。駅も、開業前は長く「奥津軽(仮称)」の名で呼ばれていた。しかし、開業に際し、今別町の意向で「いまべつ」の文字が加わった。

新幹線開業と同時に運行開始

奥津軽いまべつ駅と津軽中里駅の距離は約33km、間を結ぶ公共交通機関はない。そこで、北海道新幹線開業と同時に連絡バスが走り始めた。1日4往復で所要1時間、運賃は片道1200円だ。

しかし、利用は1便平均1人前後と伸び悩んだ。今別町役場に事務局を置く連絡バスの運行協議会は、開業1周年に合わせてバスを「あらま号」と名付けたり、割引制度を試行したり、モニターツアーを重ねたり……と対策を講じてきた。しかし、奥津軽地域と今別町は通婚圏にあるものの、ともに人口が少ないうえ、その減少と高齢化が著しい。

特に今別町は2019年11月現在の推計人口(国勢調査をベースに自然増減・社会増減を加減した人口。青森県庁のデータによる)が2408人、同年2月現在の高齢化率が53.45%と、青森県の人口減少・高齢化の最先端にいる。互いを行き来する地元の需要そのものが細っており、また、観光客だけでバス利用者を確保することも容易ではない。

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