ジャズに最適?「日本一小さい新幹線駅」活用法

"コンサートホール並みの音響"に感動の声も

コンサートには、JR北海道の宮越宏幸・函館支社長、今別町の中嶋久彰町長も顔を出した。北海道新幹線やJR津軽線を見渡せる連絡通路では、野菜などを煮込んだ郷土料理「あづべ汁」の振る舞いや、コンブ、農産物などの直売が行われた。ささやかながら、地元の思いが濃集された催しである様子が伝わってきた。

改札口から見た奥津軽いまべつ駅のコンサート会場。小ぶりだが音響はよいという=2019年12月(筆者撮影)

演奏メンバーは青森市と弘前市、五所川原市、鶴田町から駆けつけた。津軽地方をほぼカバーする顔触れだ。セッティングを手掛けたのは、青森県で唯一、国の「観光カリスマ」に認定されている角田周さん。作家・太宰治を生んだ五所川原市金木地区の出身で、1980年代末、「地吹雪体験ツアー」をスタートさせ、ネガティブな自然現象を観光資源化した実績を持つ。

2010年12月の東北新幹線全線開通・新青森駅開業時には、民間の立ち位置からその効果を最大化しようと、県内外のメンバーを集めて「あおもり観光デザイン会議」を組織し、フォーラムなどを展開した。

音はよいが最後まで聴けない…

この活動の傍ら、2013年に「あおもりスペース活性化プロジェクト」を仲間とスタートさせ、寺院や酒醸造元、居酒屋、カフェといった施設でジャズ・コンサートや公開講座を企画してきた。今回の演奏は「会場が新幹線の構内と聞いて驚いたが、響きがコンサートホールのようによくて感動した」という。コンパクトな駅の構造に、意外な効用があったという“お墨付き”だ。

一方、今別町役場は2016年3月の北海道新幹線開業後、同年10月から駅でのイベントを始めた。毎回10万円ほどの予算を組み、地元に伝わる人形劇「金多豆蔵」(きんた・まめぞう)の上演や高校の三味線部の演奏、郷土芸能、地方アイドル「りんご娘」のコンサートなどを重ね、今回が16回目になる。

残念ながら、演奏を最後まで聴き届けることはできなかった。15時35分発の上り「はやぶさ30号」を逃すと、次の列車は約4時間後だ。奥津軽いまべつ駅に止まる列車は1日7往復、うち東京までが5往復、盛岡・新青森までが各1往復しかない。滞在2時間、新青森からの交通費は自由席(特定特急券)でも片道2190円。どんなプログラムなら、この条件でお客を呼べるだろう。

当日、新幹線でコンサートを聴きに来たのは、筆者とJR北海道の函館支社長だけだったようだ。

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