「オーストラリア火災」がここまで悪化した理由 気候変動を認めたくないモリソン首相
「われわれは遅れている」と、気候変動を含む実存的な脅威を専門にしているメルボルンのラ・トローブ大学のジョセフ・カミレリ政治学名誉教授は言う。「オーストラリアの火災のよかった点は、気候変動がいまここに本当に存在し、オーストラリアを含む各国が、現在やっていることよりもはるかに多くの努力をしなければならないことを、私たちに示したことだ」。
オーストラリアの保守派のリーダーたちは、往々にして、世界の温室効果ガスの排出量に対し、同国の排出量が占める割合は非常にわずかだと指摘する。だが、専門家の多くは、COP25でのオーストラリアの言動は、世界中の発電所で燃焼されることになる膨大な量の石炭をオーストラリアが採取し、輸出しているという事実を含んでいないと指摘している。
「政府は排出量を削減してきたと主張している」と、気候研究所のヘア所長は言う。だが、「政府は自分たちの論拠を正当化、あるいは、説明するために基本的に報告をごまかしている」。
住民にやじを浴びせられた
モリソン首相は1月2日の記者会見で、政府の気候政策については、これまでと同様、自国の継続的な発展を邪魔しないものとして扱った。そして国民に対し、政府を信じ、忍耐強くあるように求めた。
モリソン首相は政治の嵐をうまく乗り切ることができるかもしれない。先の選挙では驚きの勝利を収めており、次の選挙は2年後までない。前回の選挙では石炭採掘の中心地であるクイーンズランドの支援に助けられた。
しかし、人口過密地帯の東海岸全体で、人々の忍耐は尽きかけており、それは急速に怒りへと変化している。2日の記者会見の数時間後、モリソン首相は火災で悲惨な状態にあるコバーゴを訪れ、被害状況を確認して住民に支援を誓った。
が、住民はモリソン首相にやじを浴びせ追い返した。彼が立ち去って車に乗り込む前に、住民の1人が「あなたは国が燃えるのを放置した」と叫んだ。
同じく悲惨な状況にある、オーストラリア南東部のマラクータでは、何百人もの住民が軍艦でヘイスティングスの町に避難した。シドニーから来た旅行者、マイケル・ハーキンは、気候変動に対する政府の怠慢に怒りが増した、と話す。彼は、モリソン政権は「不可避なことを避ける無能な統治」そのものだと憤る。「彼らはまったくわれわれの安全を確保してくれていない」。
(執筆:Livia Albeck-Ripka記者, Jamie Tarabay記者、Isabella Kwai記者)
(C)2020 The New York Times News Services
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら