「パン好きの牛乳」が大ヒットした意外な理由 手掛けるのは本業は"異業種"のあのメーカー

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「青山パン祭り」など、パン好きが集まるイベントには積極的に参加(写真:カネカ提供)

また、新たな出会いもあった。同イベントの主催者だったコーヒーショップ・バリスタの加藤渉さんだ。「彼がうちの牛乳を使ってカフェオレを作ってくれて。これがめちゃくちゃ美味しかった」と、天川さん。これを機に、加藤さんからアドバイスをもらいながら第2弾商品「パン好きのカフェオレ」を開発した。

原料は、生乳・砂糖・コーヒー豆のみのシンプルな設計。「脱脂粉乳などを使うカフェオレが多いところ、生乳94%を使ってリッチな味わいに。コーヒー豆もグアテマラ産の最高級グレードのものを使用しています」と、天川さんは胸を張る。現在、牛乳よりも売れているという。

筆者は、よりミルクのうまみを楽しめる牛乳のほうが好みだが、息子はカフェオレ推しで500mlをほとんど1人で飲み干した。甘味がありつつスッキリしているので、子どもも飲みやすいのだろう。ちなみに、パン愛好家によると、同社の牛乳はあんパンやカレーパン、カフェオレはバター感の強いクロワッサンやチョコレート系のパンと相性がよいそうだ。

気になる価格だが、こだわりの商品であるだけに若干お高め。しかも店舗により異なる。500mlの相場は牛乳が200円~、カフェオレが300円くらいのようだが、筆者が購入した地元パン屋は牛乳もカフェオレも税込312円だった。1軒目の都心部のパン屋では完売だったこともあり、需要の高さを肌で感じた。

販路拡大中で新商品も続々投入予定

同社は、乳製品事業で2022年度には売上高200億円を目指している。現在、製造は大阪の工場に委託しているが、北海道に自社工場の建設も予定。

ピュアナチュール社ブランドのヨーグルト(写真)や発酵バターも発売中。「パン好き」シリーズに限らずさまざまな乳製品を展開する予定(撮影:今井康一)

「パン好き」シリーズに限らず、乳酸菌技術を生かした機能性商品や有機乳製品などもあわせて積極的に商品数を増やし、販路を広げていく方針だ。

「パン好き」シリーズに関しては、現在、楽天の自社サイトでも買えるほか、イトーヨーカドーやデイリーヤマザキなどでも販売が始まっており、販路は約2000店舗まで拡大した。2020年春には有名なベーカリーチェーンやコンビニなどでの販売も決まっている。一消費者としては入手しやすくなるのはありがたい。

一方、販路が拡大されると、「パン屋限定の特別感」が薄れファンの購買意欲が落ちる心配や、スーパーなどで安価な牛乳と並ぶと手に取ってもらいにくいのではという疑問も浮かぶ。

今後もパンに絡んだ販促に注力するというが、このあたりはゆくゆく課題になってくるのだろうか。パン好きの輪を越えていかにファンを増やしていくのか、これからの動向が気になる。

佐藤 ちひろ ライター・エディター

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さとう ちひろ / Chihiro Sato

インテリア専門商社にて内装デザインや商品開発リサーチ等を担当後、美容系ECサイトや新聞生活情報面の編集に携わる。独立後は企業取材やライフをテーマにした企画を中心に執筆活動を展開。東洋経済オンラインでは「めちゃ売れ!コスパ最強商品はコレだ」「溺愛される商品にはワケがある」など消費財関連の連載執筆を担当。プライベートでは1児の母。

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