史上最悪だった「日韓関係」で次に起こること 安倍首相、文大統領とも関係改善には慎重か

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しかしそれまでは、文大統領は非常に慎重な態度を崩さないだろう。同大統領は、韓国の文喜相国会議長が主導する強制労働者問題の妥協案を見つける努力を受け入れていない。それどころか、12月18日には元徴用工らに対して補償を行うため、日韓の企業や個人の寄付金による基金の設立に向けた法案を提出している。

提案された基金は、戦争中にドイツの鉱山および工場で働くことを強制されたすべての人々に補償金を支払った、2000年に設立されたドイツの「記憶・責任・未来」財団をモデルにしている。同財団は、ドイツ政府および、戦争中の日本企業と同様にこうした労働力を利用したドイツ企業の両者から、資金を募った。

基金の設立以外に解決法はない?

もっとも、文政権が日韓間の2015年合意で、いわゆる慰安婦に対して補償を行うために作られた同様の財団を解体していることもあって、この提案に懐疑的な見方もある。同提案に対しては、韓国の裁判所で訴訟を起こした人々とその弁護士の支持を示していないし、 安倍政権もまた、日本の公的な資金も犠牲者への公式の謝罪も要求していないもののこの提案に対して慎重だ。

「文議長の案は完璧なものではない」と東京大学の佐橋准教授は言う。「基金は韓国企業、韓国政府および日本企業の間で平等に分けられたほうがいい。この解決法でさえ、両国の国内で批判に直面するだろうが、ほかの選択肢は考えられない」。

この背景には、日本と韓国の外交関係を正常化し、日本の大規模な助成金や融資の提供を通じて元徴用工らの補償の問題に対処した、1965年の日韓基本条約の位置づけの問題が潜んでいる。

これらの資金は、韓国の工業化への財源として使用されたが、限定的ながら個人補償も行われた。韓国の進歩主義者たちは長い間、この条約の合法性に異議を申し立てており、アメリカによって韓国に押し付けられ、軍事指導者の朴正煕が率いる「親日」政権によって作られたものだと主張している。

一方、日本政府は、この問題は同条約によって解決済みという主張を続け、条約で定められた第三者の仲裁手続きを通じて現在の危機に対処するよう提案した。文政権はこれまでのところ、日韓基本条約に今も拘束されていると感じているかどうかには触れず、条約全体の再交渉問題を引き起こすことを慎重に避けている。

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