軽減税率にポイント還元「増税対策」不発のワケ さまざまな指標から見える消費意欲の減退

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もはや毎年の恒例行事と化している経済対策の中身も、相変わらずバラマキだ。新味を打ち出そうとしたのか、今年は「Society 5.0時代を担う人材投資」という名目で、2023年度までに義務教育(小中学校、国公私立全校)の児童生徒一人ひとりにパソコンを配備することを決めた。「GIGAスクール構想」と名づけられたこの政策により、2019年度の補正予算で2318億円を計上した。

経済対策と連動した2020年度予算案も12月20日に決まった。3つある柱の1つが「東京オリンピック・パラリンピック後も見据えて、個人消費や投資を切れ目なく下支え」すること。具体的には、キャッシュレス・ポイント還元事業に2703億円、マイナンバーカードを活用した消費活性化策に2478億円を投じる。

遠いエビデンスに基づいた政策形成

こうした一種のバラマキもさることながら、問題なのは、政府が最近盛んに喧伝するEBPM、すなわち「エビデンスに基づいた政策形成」とは程遠い政策の決め方をしていることだ。

総合経済対策を決めたのは12月5日。ところが、冒頭に触れたように、10月の経済指標は12月6日公表の家計調査を皮切りに、経済対策の決定以降に公表されている。つまり、経済統計によって10月以降の日本経済の姿を確認する前に、対策を決めてしまっている。

5日決定の総合経済対策は、消費増税の影響について「一部では台風の影響等もあって販売減がみられるが、現時点では全体として前回(2014年)ほどではないと見られる」と判断しているが、当然ながら10月以降の経済指標は出そろっておらず、どうやらデータをみて経済対策を決めているわけではないようだ。

もちろん、経済対策には予防的な意味はある。だが、消費増税の影響を気にかけるのであれば、状況をもう少し見極めた後に政策を打ってもよかったのではなかろうか。

エビデンスに基づく政策形成を唱道しながら、一方で行政文書を平気で廃棄し、「桜を見る会」の招待者名簿すらまともに保存できない。そういうチグハグサを恬(てん)として恥じない安倍政権らしい、経済対策の決め方である。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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