「コード・ブルー」作り手が語る医療ドラマの裏 新ドラマ「トップナイフ」が追求するリアル
林:脳について解明されればされるほど、人間の不確かさに気づかされるのがまた面白くて。普段から怒りっぽかった人が、脳腫瘍を切除したら穏やかに変わったりする。僕たちが人の性格だと思っているものは、脳の働きや神経の信号によってあらわれているもので、ごく単純なきっかけで様変わりするものなんだなと。
不確かさは怖くなく、むしろ魅力的だ
新村:そこに立ち会っているのが脳外科医なんですよね。あるいは精神科医もそうかもしれない。脳腫瘍や血管の治療など、いわば「目に見える病気」を治す技術はどんどん進んでいますが、「目に見えない病気」はまだまだ曖昧なところがある領域です。小説に書かれているとおり、記憶がまさにそうですね。息子が母親のことを「宇宙人」だと言い始める。
一瞬でメロディを覚えてしまうが、本人はそのことに気づいていない。自分を死んだ人間のように錯覚して生きている。そういった症例を通して、林さんは人間そのものを思索されたんですね。
林:それに医学的な肉づけをしてくれたのが新村さんです。僕ね、脳の本を読むうちに、オバケが怖くなくなったんですよ。オバケはいるとかいないじゃなくて、光の刺激によって脳が僕に見せているものだからって。真っ暗闇で刺激のほとんどない所に行くと簡単に見えるらしいし、幻影を見出すってそれくらいのことなのかもなって。そう思うと、不確かだっていうのは怖いことじゃなくて、魅力的なことだなと思えてきて。
新村:病気を描くことで、人間の不確かさを受け入れていく。おたがいに立場は違うけれど、僕と林さんはそんな共同作業をしているのかもしれないですね。
(構成:五所 純子)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら